政府は8日、ベンチャー企業の株式を購入した個人投資家の所得税を減税する「エンジェル税制」を拡充する方向で検討に入った。現在は減税の条件として設立後「3年未満」の企業を対象とするが、これを「5年未満」に延ばし、投資先の選択肢を広げる。ベンチャー企業の資金繰りを税制面から支援し、新たな産業の担い手を育成、国内産業の空洞化対策の“切り札”とする狙い。政府が6月にまとめる成長戦略改訂版の目玉として打ち出し、年末の2015年度税制改正大綱への盛り込みを目指す。
政府がエンジェル税制を拡充するのは、制度利用が低迷し、ベンチャー企業を育成する効果が限定されているため。経済産業省によれば、制度が導入された1997年度から2012年度までの累計の利用額は88億円に過ぎず、政府・与党内からも、見直しを求める声が強まっている。
ベンチャー企業の育成拡大は、安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の成長戦略の目玉の一つ。製造業の海外生産移転などで国内の空洞化が進む中、ITやバイオなどの成長分野で新事業の創設を促すことが抜本的な対策につながると判断しているためだ。政府が昨年6月に策定した成長戦略「日本再興戦略」では、新たな企業がどれだけ開業されたかを示す「開業率」について、現状の約5%から、欧米並みの10%程度まで高めることが打ち出された。エンジェル税制の見直しはその一環となる。