【日曜経済講座】編集委員・田村秀男
ほぼ1年前、拙論は本欄で内閣府が発表した「中長期の経済財政に関する試算」が世を欺く「虚報」だと断じた。安倍晋三首相のお膝元の内閣府はアベノミクスによる景気の好転を無視し、平成25年度の税収が前年度より減るという数値を試算の起点とし、「財政収支悪化」シナリオを描いた。財務省の影響下にある官庁エコノミスト集団である内閣府は今年4月からの消費税増税をそうして正当化した。実際の税収は、景気浮揚に伴って大幅に増えると論じた拙論の見立て通りになったのだが、官僚たちは誤りを認めないどころか、さらに同じ間違いを平然と繰り返し、政策と世論をミスリードし、国家と国民を窮地に追い込む。
内閣府は7月25日に発表した今年度版の同試算でも税収を極端なまでに低く見積もった。政府が「国際公約」した32年度のプライマリーバランス(基礎的財政収支=公債など借金関連を除いた財政収支)は国・地方合わせて11兆円(国の一般会計分は9・5兆円)の赤字になるとし、メディアに対して来年10月からの消費税率10%への予定通りの再引き上げはもとより、さらなる増税が不可欠と報じるよう教唆している。