フィリピンは通信市場で加入者の取り込みが活発化し、競争が激化している。同国の携帯・固定・ブロードバンド回線のシェア63%を握る通信最大手フィリピン長距離電話(PLDT)と、同37%で2位のグローブテレコムは今年、1000億円規模の設備投資を行って通信網を拡大する見通しだ。現地紙マニラ・タイムズなどが報じた。
PLDTは今年、390億ペソ(約1065億円)を設備投資に回す計画で、3G(第3世代)、4G(第4世代)、高速通信サービスのLTEの通信網拡充を図る。同社幹部は競争力の強化に通信網の拡充は欠かせないとし、今年の鍵として音声・映像など大量のデータを使用する消費者の囲い込みを挙げた。
昨年もPLDTとグローブテレコムの間では、無料サービスの展開などで激しい競争が繰り広げられた。その結果、PLDTの業績は設備投資の拡大やシェア維持のためのコスト上昇などで最終利益が前年比4%減の341億ペソにとどまった。
一方、グローブテレコムは通信網整備が一段落して整備費が減少、最終利益は前年の約2.7倍となる134億ペソに急伸した。同社は交流サイトのフェイスブックへの無料アクセスの提供が功を奏し、加入者と通信量の増加が利益を押し上げたと分析している。
同社幹部は「データ通信の需要は拡大しており、接続環境の充実も求められている」と述べ、今年は8億5000万ドル(約1032億円)の設備投資を実施する意向を表明した。投資の大部分は3GとLTE通信網の拡充に投じられる見通しだ。
今後スマートフォンの普及が進むとみられているなか、両社は高速携帯通信網の整備で携帯電話部門を中心に加入者の取り込みを図る。2014年の携帯電話加入者数は、PLDTが6990万人、グローブテレコムが4400万人。この差が縮まるのか、開くのか。今年も通信市場の激しい競争が続きそうだ。(シンガポール支局)