環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉がまたもや“空振り”に終わった。参加各国とも今回の閣僚会合を「最後の会合」とする意欲を持って臨んだはずなのになぜ大筋合意にこぎ着けられなかったのか。障害となったのは知的財産の新薬データ保護期間と乳製品の関税をめぐる対立だ。土壇場で、ニュージーランドが想定以上の難敵として、交渉を主導する日米の前に立ちふさがった。
「交渉の最終盤になると、最後のチャンスにできるだけ自分の要求をねじ込みたいという思惑が働く」
甘利明TPP担当相は7月31日、閣僚会合閉幕後の単独記者会見でこう述べ、大筋合意に至らなかったことに悔しさをにじませた。
ルール分野で最後まで交渉がこじれたのは、新薬の開発データ保護期間をめぐる対立だった。国内メーカーに配慮して長く保護したい米国に、安価な後発薬を普及させたいベトナムやマレーシアなどの新興国が抵抗を続けた。
そこに、オーストラリアが事態を複雑にした。オーストラリアは医薬品の価格決定制度を独自に導入し、補助金も使って薬価を抑えている。後発薬の利用が妨げられれば国の財政負担が増えると主張した。