今月19日、中国の習近平国家主席はフィリピン・マニラでアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の席上、「FTAAPのプロセスを加速させ、できるだけ早く実現させるべきだ」と話した。FTAAPとはアジア太平洋自由貿易圏のことで、APECに参加するアジア太平洋の21カ国と地域が丸ごと入る巨大な自由貿易圏の構想だ。昨年に北京で開かれたAPEC首脳会議で習主席がその早期実現を提唱していた。
その前日に習主席はFTAAPの意義を強調した上で「現在、新しい自由貿易圏が絶えず出現し、分裂化の傾向が懸念されている」と話していた。10月に日米など12カ国が大筋合意した環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)を念頭にした発言だと思われる。
中国はTPPが経済的な対中包囲網になることを警戒してきた。TPPは物品貿易について99.9%の関税撤廃を求めているほか、知的財産権の保護、環境面への配慮などについても要求水準が高く、現段階で中国が入るのは難しい。日米が主導して、中国を除外した形でアジア太平洋の通商ルールを作ってしまうことに深い危機感を持っているのだ。