□ジェトロ・アジア経済研究所 地域研究センター 研究グループ長代理・鈴木有理佳
■財政健全化で顕著な功績 国のイメージと信頼度が向上
ベニグノ・アキノ3世が2010年6月30日に大統領に就任して以来、フィリピンは国のイメージが向上し、国際的な信頼度が高まった。フィッチ・レーティングス、スタンダード&プアーズ、ムーディーズの米格付け大手3社は、フィリピンを投資適格に引き上げた。理由の一つは、アキノ政権が財政健全化に努めてきたからだ。歳出を抑える一方で、歳入の回復に努めてきた。国内総生産(GDP)に対する租税収入の割合は、09年の12.2%から14年に13.6%へと上昇した。この間、財政赤字は3.7%から0.6%まで低減している。
◆高い支持率
マクロ経済も好調だ。アキノ政権下のGDP成長率は、3.6%だった11年を除き、6~7%台で推移し、インドネシアやマレーシア、タイなどの近隣諸国を上回る。経常収支も黒字を維持している。国内の物価は安定し、実質賃金も目減りせず、生活水準に変動がない。とりあえず、国民の多くはアキノ政権の経済運営に不満を抱いていないだろう。
アキノ政権が経済運営で成功した要因は何か。最も大きいのは国民の支持率が高く、政権が安定していることだ。今年9月の大統領支持率は64%だった。大統領の任期は6年で再選が認めらないフィリピンでは、通常、政権末期になると大統領支持率が半分以下にがくんと下がる。来年5月で任期切れとなるアキノ大統領が、これだけの支持率を得ているのは驚異的と言っても過言ではない。