黒煙をまき散らしながら走行するトラック=インド・ニューデリー(AP)【拡大】
インドは、深刻化する大気汚染への対策に着手する。同国政府は、登録から15年を経過したトラックなど商用車の走行規制を実施する見通しだ。老朽化したトラックやバスの排ガスを抑制し、大気汚染の改善を目指す。現地経済紙フィナンシャル・エクスプレスなどが報じた。
政府機関の科学環境センターは、同国の大気汚染の主な原因の一つが排ガス浄化装置などが装備されず老朽化した商用車の排ガスで、それらが自動車排ガス全体の6割に相当すると指摘する。
国連の世界保健機関(WHO)によると、世界で大気汚染が悪化している20都市のうち13都市をインドが占め、首都ニューデリーが世界最悪とされる。同国では大気汚染による死者が年間60万人に達するという。
道路交通・高速道路省の幹部は「何らかの手段を講じなければ、インドの大気汚染は年々悪化する」と述べ、バスやトラックなどすべての商用車について使用上限を15年とする方針を示した。走行規制は2016年4月1日から行われる予定だ。
ただ、科学環境センターの専門家は、商用車の走行制限だけでは大気汚染防止に不十分だと指摘する。自家用車を含めた車両の使用を制限するため、自動車税の引き上げなどに加え、公共交通網の整備加速が不可欠だとし、政府の積極的な取り組みを求めた。
一方、今回の規制に伴い、約270万台のトラックが走行できなくなり、買い替え需要が高まるとみられている。地場商用車ボルボ・アイシャー・コマーシャル・ビークルズの最高経営責任者は、老朽化トラックの走行規制を徹底するためにも、同国政府は買い替えが必要な運送業者などに優遇措置を講じるべきだとの見方を示した。(ニューデリー支局)