英国の欧州連合(EU)離脱への警戒感を背景に、世界中の投資家がリスク回避に動き始めている。日米欧の債券市場では、比較的安全な資産とされる国債が買われて長期金利が低下。10日の東京債券市場では、長期金利の指標となる新発10年物国債の利回りがマイナス0.155%と過去最低を更新した。9日の海外の外国為替市場では欧州の通貨ユーロが売られ、対円で一時1ユーロ=120円32銭と約3年2カ月ぶりのユーロ安円高水準となった。
日本の10年債利回りのこれまでの最低は、4月下旬につけたマイナス0.135%だった。10日は最低記録を小刻みに更新し、金利低下に拍車がかかった。
長期金利の低下は世界的な動きとなっている。9日はドイツの10年債利回りが一時0.02%台まで低下して節目の0%に迫り、英国の10年債利回りも過去最低水準となった。英国のEU離脱懸念などのリスクが意識される中、投資家がリスク回避姿勢を強め、国債に投機資金が流れ込んだ。
早期追加利上げ観測の後退を背景に最近は低下傾向にあった米国の10年債利回りも、9日は欧州の金利低下につられて2月下旬以来の低水準をつけた。こうした欧米の金利低下が10日の日本国債にも波及した。
外為市場では、ユーロが円やドルに対して下落基調を強めた。9日の海外の外為市場では、ユーロは対円で一時1ユーロ=120円32銭まで下落。10日の東京外為市場でも1ユーロ=120円台後半を中心に推移し、ユーロ安円高基調が続いた。
EU離脱が現実となれば「ユーロは1ユーロ=118円よりも下落し、日本の10年債利回りはマイナス0.2%程度まで低下すると意識せざるを得ない」(三井住友アセットマネジメントの市川雅浩シニアストラテジスト)との見方もある。