米大統領選は共和党のトランプ候補の勝利で終わった。従来の外交・安全保障路線に「ノー」を唱える新政権の登場で、当面の間、米対外政策に空白を生みかねない。それに乗じるのは中国である。北朝鮮情勢をみよう。
北の9月9日の5回目の核実験に対し、国連安保理は制裁強化に向け、動き出したはずなのに、2カ月経っても何も決まらない。レームダック同然のオバマ政権は無力だ。大統領選では外交政策そっちのけの泥仕合が続いた。その間隙をついてきたのは中国だ。
これまで対北朝鮮国連制裁決議に応じたのも見せかけで、実際には北向けにせっせと軍事転用可能な物資の輸出を増やす一方で、北からの禁制品輸入品を増やして北の外貨稼ぎに協力してきた。グラフは中国からの石油製品と鉄鋼製品の対北輸出量の推移である。安保理制裁があろうと、北が核実験を繰り返そうとも、ほぼ一貫して増えている。とりわけ、習近平氏が共産党総書記に就任した2012年以降の急増ぶりが目立つ。