□スパイダー・イニシアティブ代表 森辺一樹
読者の方々は「国籍」とは何だとお考えだろうか。実は私にもその答えはまだ明確に出ていない。しかし最近、2人の友人から聞いたエピソードにより、私の国籍に対する考え方が少し変わった。
まず1人目は40代前半の男性で、彼の両親は純粋な日本人だ。親の仕事の関係で彼が小学生のときに家族で米国に渡った。彼は中学・高校時代を米国で過ごし、大学は自分の意志で米国の大学を選択した。両親はとっくに日本に帰国していたが、彼は米国に1人残った。そして無事に大学を卒業。それだけ長く米国の社会で生きているので、日本語も英語も同じくらい堪能なのだが、帰国して日本の会社組織に入るという選択をせず、米国の現地企業に就職した。
そんな彼が、このたび米国籍を取得したという。通常、国籍は日本のままで、グリーンカードを保有して就労する権利を得て、米国で生活するのが一般的だが、彼は国籍を変える道を選んだ。理由を聞くと、「自分の生活基盤がある米国の国籍にした方が自然だから」という返答で、特に感情的な理由はなく、彼にとっては大した問題ではなかった。彼は、自分は日本で生まれ、米国籍になっても自分は日本人だと認識している。
もう1人の友人も同じく40代前半の男性。彼は韓国人で、父親がシンガポールに自分の会社を持っていたため、中学生のときからシンガポールに住んでいる。中学、高校とシンガポールのアメリカンスクールに通い、大学は韓国に戻った。その後、父親の会社を継ぐために再びシンガポールに戻り、そのタイミングで国籍をシンガポールに変えた。彼も自分のことを韓国人だと思っているが、シンガポールに自分たちの生活基盤があるから自然なことだと国籍をあっさり変えた。