中国から流入オピオイドに蝕まれる米国 トランプ氏来月訪中「習主席に優先課題で話す」

 【ワシントン=塩原永久】トランプ米大統領は26日、国内で処方されている鎮痛剤「オピオイド」の過剰摂取による死者が増加していることを受けて、「公衆衛生の非常事態」を宣言し、連邦政府の全省庁による対策加速を指示した。記者会見したトランプ氏は、中国から流入する違法薬物に言及し、来月の習近平主席との会談で対応を求める方針を示した。

 ホワイトハウスでトランプ氏は、過剰摂取で1日約175人が死亡していると述べ、「私たちの世代でオピオイドの蔓(まん)延(えん)を終わらせよう」と強調した。

 米国では、がん患者や腰痛などの痛みへの対処でオピオイドが広く処方されてきたが、依存性が高いため過剰摂取し、中毒症となる人が増加。昨年は中毒死が6万4千人を超えた。昨年4月に急死した米歌手プリンスさんの死因もオピオイドの過剰摂取とされる。

 中毒者が白人低所得層で増加したとの統計もあり、トランプ氏は昨年の大統領選で抜本対策を掲げた。

 「公衆衛生の非常事態」宣言を受け、関係機関を中心に、中毒者が治療を受けやすくしたり、中毒性が低い鎮痛剤の普及を図る。製薬会社が違法な宣伝を行っていないか取り締まるほか、外国からの違法薬物流入を阻止する。

 依存症となった人が違法薬物に手を出すケースも多く、合成薬「フェンタニル」の一種が中国で製造され、米国に流入していると指摘されてきた。トランプ氏は会見で、中国を名指しし、来月の訪中で「習近平主席と会った際、優先課題として言及する」と述べ、中国側の対応を求める考えを示した。米国では郵政公社など関係当局で、中国からの郵便物の検査を強化するという。

 オピオイドは、ヘロインやモルヒネと同様、ケシに含まれる成分から製造した麻薬の一種。日本では処方が厳しく制限されている。

米国の生産性むしばむ鎮痛剤乱用 職務遂行能力が低下、けがやニアミスの原因に