【ビジネスアイコラム】金融理論の貧困がデフレを招く 伝統に固執 視点を変えられぬ日銀 (1/3ページ)

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 ■伝統に固執 視点を変えられぬ日銀

 アベノミクスが始まって以来もう5年だが、肝心の脱デフレのめどが立たない中、「日銀理論」に固執してきた白川方明前日銀総裁時代までの日銀主流グループが息を吹き返している。日銀理論とは貨幣の供給によってインフレをコントロールできない、という見方だ。

 典型は元日銀金融研究所長で法政大学客員教授の翁邦雄氏だ。氏は26日付の日経新聞朝刊で「日銀がマネタリーベース(資金供給量)を増やすだけで物価が上がるという直接的な波及経路はない。日銀は将来の物価が上がるという『期待』を生むとしたが、多くの国民はマネタリーベースとは何かを詳しくは知らないだろう。だからインフレ期待も生まれない」と言い切った。

 中央銀行がおカネをじゃんじゃん刷れば、物価は必ず上がると岩田規久男日銀副総裁らリフレ派エコノミストは主張するのに対し、翁氏ら日銀理論派は一般国民がそう思うはずはないと断じるわけだ。

 黒田東彦総裁の日銀は年間で最高80兆円もの資金を追加発行しながら、5年間という中長期間でも継続的にインフレ率をプラスに持っていけない。物価動向は異次元緩和前とほとんど変わらないのだから、なるほど、論争の軍配は日銀理論派に上がりそうだが、ちょっと待てよ。このマネー論争は土俵、すなわち問題設定を間違えているのではないか。

 金融資産市場が実物市場である国内総生産(GDP)を圧倒する金融資本主義の現代において、中央銀行資金がGDPの主要素である物価に直接作用するとは考えにくい。中央銀行資金は金融機関に供給されるのだから、カネの資産市場である金融市場に向かうのは当然だ。物価がうんぬん、とばかり口角泡飛ばしても平行線をたどる不毛論争になってしまう。

現実に即した視点とは何か