経営難の仏原子力大手、中国が再処理工場受注へ マクロン氏の訪中さなかに覚書調印

 【パリ=三井美奈】フランスの原子力大手アレバは9日、中国での核燃料再処理工場の建設で国営「中国核工業集団」(CNNC)と合意に達し、北京で覚書に調印したと発表した。事業総額は100億ユーロ(約1兆3300億円)とみられ、経営危機にあるアレバを中国資本が救うことになる。

 調印式には、中国を訪問中のマクロン仏大統領と習近平・中国国家主席が立ち会った。欧州連合(EU)では中国の投資増大に伴い、戦略産業の技術流出への懸念が高まっているが、マクロン氏は記者会見で「協力には相互バランスが大切。あらかじめ決められた産業で中国の対欧投資を容易にし、中国には欧州からの投資も容易にしてもらう」と主張した。

 アレバによると、中国に建設する再処理工場はフランス北部のラ・アーグ再処理工場をモデルとし、処理能力は800トン。マクロン氏とともに訪中したルメール経済・財務相は「今春には契約に調印できるだろう」と記者団に述べた。アレバとCNNCは2015年に資本協力を発表。再処理工場の30年操業開始に向け、交渉を続けてきた。

 アレバはフランス電力の傘下にあり、実質的な国営企業。11年の福島第一原発事故以降、世界的な原子力産業の冷え込みで経営が悪化。フィンランドやフランスで建設中の新型原子炉の完成が遅れ、巨額の負債を抱えている。