日銀が15日公表した「さくらリポート」は景気拡大の波が地方にも順調に広がっていることを示したが、懸念されるのは深刻化する人手不足の影響だ。賃上げが進みやすくなり景気の好循環を促す期待がある半面、人件費増が、せっかく持ち直した企業収益を圧迫する恐れもあるためで、日本経済は正念場を迎えている。
「来年度の設備投資額は過去最高を更新する見込み」(広島の自動車関連)、「1人当たりの購入額が一段と増加している」(大阪の百貨店)。さくらリポートからは、幅広い地域・業種に好景気の流れが及んでいることが分かる。
実際、経済産業省は昨年12月、鉱工業生産の好調な勢いを「持ち直している」と、22年ぶりとなる強い基調判断で評価。景気の恩恵が届きにくかった百貨店やスーパーでも、販売額が前年を上回る地域が増えている。
こうした景気の好調ぶりからさまざまな業種で人手不足が生じており、政府・日銀では今春闘の賃上げがさらに景気を押し上げることへの期待が高まっている。
ただ、人手不足には負の側面もある。事業が継続できなくなるリスクがあるほか、賃上げにつながっても、人件費の増加分を商品やサービスの価格に転嫁できなければ、企業収益の圧迫につながるからだ。
「業界関係者が顔をそろえれば決まって人手不足の話題だ」
福井県あわら市の老舗旅館「ホテル八木」の八木一夫社長(39)は、人手不足の現状をそう訴える。