疾走する馬の背で、逆立ちしたりあおむけになったりしてみせる朝鮮半島の伝統武芸「馬上才」を再現する取り組みが、韓国で続いている。朝鮮王朝の外交使節「朝鮮通信使」の一行が日本で披露したことでも知られ、「元祖韓流」との声もある一方、騎手のなり手が少ないなど、技術伝承に課題は多い。
馬上才は敵の攻撃を避ける技術から発展したとされ、朝鮮時代を最後にほぼ断絶した。日本の植民地支配が原因とする説や、朝鮮に侵攻した清が兵器となる馬の保有を許さなかったとの説もある。
「韓国人の騎馬民族としての自尊心を思い起こしてください」。昨年10月、南東部の慶尚北道永川市で開かれた祭りで同道奉化郡の「乗馬教育院」の生徒らが馬上才の公演を披露し、喝采を浴びた。同様の公演を手掛ける団体は全国に複数あるが、崔致栄院長によると、馬の管理費がかさむほか、落馬の恐れから騎手のなり手は少なく、団体間の交流も希薄だ。
京畿道水原市の伝統武芸公演団で演出を担当する崔炯国さんによると、韓国では1980~90年代、伝統武芸の再現が本格化した。基となるのは18世紀の武芸教本「武芸図譜通志」の挿絵と解説。通信使の一行が披露した馬上才を描いた日本の絵も参考にする。
乗馬教育院の崔院長は「通志が教科書的なのに対し、実演を描いた日本の絵には躍動感がある。数百年たっても日韓が知識として共有する貴重なコンテンツ」と日韓交流への活用に意欲を示す。崔炯国さんは「北朝鮮とも共有する伝統武芸。いつか平壌で披露したい」と語った。(永川、水原 共同)