FX取引額、反転の兆し 仮想通貨バブルしぼみ復調

 円やドルを中心に運用する外国為替証拠金取引(FX)の取引金額が今年に入って反転の兆しを見せている。2017年はビットコインを代表格とする仮想通貨の市場規模が急拡大し、投資家がFXから離れたため、取引額は減少基調だったが、価格が上昇を続ける仮想通貨バブルがしぼんだのが復調につながった。

 ◆投資家が回帰

 金融先物取引業協会の集計では、17年12月のFX取引は前月比28%減の246兆円となり、3年4カ月ぶりの低水準に落ち込んだ。ピークだった15年1月の660兆円の半分以下に縮小した。

 FX取引の低迷は、日経平均株価の上昇で個人投資家が株式売買に向かったことも一因だがカブドットコム証券の斎藤正勝社長は「ほぼビットコインで説明がつく」と指摘する。

 仮想通貨のテレビCMが増え、FXの顧客が仮想通貨に流れていったと分析する。カブドットコム証券も17年10~12月期にFX部門の収益が減少に転じた。

 情報サイトによると、仮想通貨の取引金額は17年後半に大きく伸び、ビットコインの価格は17年12月に急伸して最高値を付けた。しかし、今年1月のFXの取引金額は365兆円となり、前月比48%増と大きく伸びた。17年は小動きだった円相場が日銀の金融緩和縮小観測から円高に振れ、取引が活発になる一方で、仮想通貨は国際的な規制強化の流れができ、投資家がFXに回帰した。

 三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは「仮想通貨には新しもの好きの投資家が集まったが損をする人も出てきた。どこかでブームは一巡する」と予想する。

 ◆高い安全性も強み

 さらに今年1月下旬には、交換業者大手のコインチェックから約580億円分の仮想通貨「NEM(ネム)」が流出した。顧客の仮想通貨をインターネットから切り離して保管するといった対策を怠っていたことが判明し、交換業者の安全管理体制が不安視された。

 FXでは、証拠金を信託で保全することが義務付けられている。外為どっとコム総合研究所の神田卓也調査部長は「仮想通貨と比べ取引システムの安全性が高く、投資家に見直されている」と述べ、FXに一日の長があると強調した。