比に原発推進の動き、人口1億で電力需要増 安価で実用的、失業者対策にも (1/2ページ)

マニラの西方約70キロにあるバターン原発=7月(共同)
マニラの西方約70キロにあるバターン原発=7月(共同)【拡大】

 フィリピンに30年以上も休眠状態の原発がある。1986年にチェルノブイリ原発事故が起き、完成間近で建設中断となり稼働が見送られてきた。原発の安全性を懸念する声は根強い一方、人口が1億を突破し、インフラ整備計画で電力需要の増加が見込まれることを背景に、政府内で最近、原発推進の動きが勢いを増している。

30年以上稼働凍結

 首都マニラの西方約70キロの半島にあるバターン原発。マニラから車で走ると、うっそうとした密林に囲まれた高台に黒ずんだ外壁の建屋が見えてきた。

 国家電力公社のホセ・マナロさんの案内で建屋内に入った。内壁にはひび割れがあり、階段の手すりの塗装は所々はがれている。中央制御室の大統領府直通のホットラインは昔ながらのダイヤル式の電話で、電力需給表の記載は89年まで。冷房はなく、動いていると汗がしたたり落ちた。

 薄暗く何の音も聞こえない。「原発はクリーンなエネルギー。二酸化炭素も排出せず、温暖化防止に有用だ」。マナロさんの声が反響した。

 東南アジア初の原発として76年に着工したものの、チェルノブイリ事故の影響で86年に稼働凍結、1ワットの電力も生み出さないまま今に至る。政府は2007年に建設費23億ドル(現在の為替相場で約2560億円)をようやく完済。その後も維持費が生じた。

 政府内では原発の話題には触れにくく稼働は棚上げ状態が続いたが、エネルギー省のエルギザ次官補は「フィリピンは今、急成長中で膨大なエネルギーを必要としている」と強調。「火力や水力などと比べ、費用や環境の観点から原子力が一番実用的。何より安価だ」と訴えた。

露企業と覚書

 原発を推す背景にはドゥテルテ大統領の方針転換がある。16年6月末の就任当初は任期中に原発稼働はないと述べていたが、11月に稼働に向けた作業に着手することを承認。17年11月、ロシア国営原子力企業ロスアトムと原子力分野での協力に関する覚書を締結した。

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