「19世紀にフランスに紹介された日本文化を取り込んだのがジャポニスム。葛飾北斎から刺激を受けた絵画のほか、デンマークには日本刀のつばをコレクションしている美術館がある。欧州にある日本文化を日本に紹介することも大事で、こうした美術品をメンテナンスしたり修復したりする技術を伝えることも必要になってくる。文化会館は日本文化の情報発信に加え、この担い手としても大きな役割を果たしてもらいたい」
--官民一体となった文化発信については
「日本は経済大国だが成熟していく。だからこそ文化大国・ニッポンを発信していくことが重要で、外交を考えても大事になってくる。厳しい財政事情から文化予算を増やせない中では民間の協力が不可欠で、ジャポニスム2018でも協賛していただいた企業にお礼を言いたい」
--文化会館とそれを支える日本友の会への期待は
「文化会館は日本文化発信のフラッグシップでありモデルケースだ。日本文化を海外に紹介する一つの手本といえる。日本政府は6月、日本の多様な魅力や政策を発信するジャパンハウスをサンパウロ、ロサンゼルスに続きロンドンに開館した。政府の肝煎りで予算もかけたが、財政的に続けるのは難しい。文化会館は多くの民間企業が財政面から支援することで持続的に情報発信することに成功している。大勢が支えることに価値があり、ジャパンハウスの運営でもこのやり方を参考にしたい。期間限定のジャポニスム2018はいわば短距離走だが、文化の発信はマラソン。続けることに意味がある」
◇
□早川茂パリ日本文化会館・日本友の会会長
■企業価値の向上につながる
--ジャポニスム2018の評判は
「日仏・日欧の文化交流を促進するとともに、相互理解のさらなる深化を目的に8カ月にわたり開催する。今世紀最大規模といえる日本文化・芸術の国際的祭典で、文化への理解度が高いフランスでどう受け入れられるかチャレンジングでもあったが、文化・芸術への好奇心旺盛なフランス人の評価も高く、成果をあげている。日本文化を多くの外国人に知ってもらうまたとない機会なので、残り期間も最大限活用し文化大国・ニッポンをアピールしていきたい」
--この時期に開催した意義は
「160周年の節目でもあるが、ジャポニスム2018を皮切りに19年のラグビーワールドカップ、20年の東京五輪・パラリンピック、さらに25年誘致を目指す大阪万博とグローバルに日本文化を発信する機会が続く。日本文化を世界に向け発信すれば、訪日外国人旅行客(インバウンド)を増やすことにもつながる。フランスはフランス文化にほれ込んだ観光客の誘致に成功、リピーターも多くインバウンドは定着している」
--日本の注目度を高めるためにも文化発信が必要になる
「今後ますます複雑化する国際社会の中で日本の影響力を増進するには、これまでの経済力で世界の信頼やリスペクトを得るだけにとどまらず、文化でもアピールしていく必要がある。誇れるものがあることを日本はもっと認識し広めるべきだ」
--民間企業に求められることは