三菱電機の杉山武史社長は2日、東京都内の本社で記者会見を開き、鉄道車両向け機器の検査不正問題など不祥事が続いたことを受けて、社長職を辞する考えを示した。杉山氏は「新たな体制で信頼回復に取り組む」と説明した。後任人事は今後決める。
同社は外部の弁護士らで構成する調査委員会を立ち上げ、9月に調査結果や再発防止策を公表する計画も発表した。品質風土改善にも取り組む。一連の問題が発覚してから、経営トップが公の場に出てきたのは初めて。
会見の冒頭、杉山氏は「自ら発見・是正できなかったことは誠に申し訳ない」と述べ、頭を下げた。
これまでの調査で、空調機器は昭和60年~令和2年にかけて、約8万4600台を約80社に納入していたことも明らかにした。また、空気圧縮機はここ15年で約1500台を約20社に納入していた。
検査不正が原因とみられる発煙や発火といった重大な事故は確認されていない。ただ、同社の品質軽視の経営による影響が、多くの鉄道事業者や利用者に広がっている。
同社では6月下旬、鉄道車両用の空調機器に加え、ブレーキやドアの開閉に使う空気圧縮機の検査で不正が発覚。不正は少なくとも35年以上前から行われていた。一部の不正には、架空のデータを元に検査結果を自動作成する「専用プログラム」が使われており、組織的に行われていた可能性が高まっている。
同社がこの問題を初めて公表したのは6月30日で、前日の定時株主総会では、ひと言も触れることはなかった。消極的な情報開示姿勢に批判が強まっていた。