Q 70代の女性です。4年ほど前に腹部の検査をしたときにコンピューター断層撮影(CT)で、直径18ミリのすりガラス状の陰影が1つ見つかりました。昨年、医師から手術を勧められましたが断りました。今年3月にCTで影が23ミリと少しずつ大きくなっていると告げられました。手術に対しては強い抵抗感があります。手術以外の治療法はないでしょうか。
A 左の肺の下方にすりガラス状の影が見つかり、少しずつ大きくなっているという場合はまず、がんなのか肺炎なのかを疑います。ここ数年で影が濃くなり、大きくなっていることなどから、がんの疑いが強いでしょう。ただ一方で、2~3年でわずかに大きくなっただけで、急激に悪くなっているわけではありません。年単位で少しずつ大きくなるタイプということも分かります。
しかし、今後どこかのタイミングで急激に大きくなったり、転移したりする可能性は否定できませんし、それがいつなのかも分かりません。そうしたことから、診断と治療のために現時点で処置(手術)することも選択になります。
Q 定期的にCTを受けるだけでは、だめでしょうか。
A 今まで経過観察してきたわけですから、このまま様子を見続けるという考え方もあるでしょう。一方で、がんの疑いがあり、悪くなったら、手遅れになったら…などの不安もあるのではないでしょうか。もし心配なら、治療を考えましょう。画像を実際に拝見していないので正確には言えませんが、話を聞く限りでは肺の下葉の端に影があるようです。そうであるなら、比較的小さな手術で取れる可能性があります。体への負担も小さいと思われます。
手術の「大きさ」は影のサイズだけではなく、病変の場所によっても違ってきます。肺の奥にある場合は、切り込みが深くなり体への負担も大きくなります。恐らく今回のケースは肺の端にあるため、切り込みは深くならないでしょう。
手術以外の治療では放射線治療が考えられます。今はピンポイントで照射でき、さまざまなケースに対応できるようになっています。ただ、放射線治療は病変を確実に取ってくれるものではありません。やはり手術が治療の優先順位では上位に来ると思います。そもそも影が、がんなのか、違うのか。これはその部分を手術して切除し、確認してみないと分かりません。
手術への不安が強い場合、経過観察も一つの選択となります。ただ、肺の影が少しずつ大きくなってきています。がんの疑いが強いのに「それでも放っておきましょう」という方が、一般的には違和感を抱く患者さんも多いかもしれません。
Q 何か自覚症状のようなものが出てきてから治療するというのでは、だめでしょうか。
A 自覚症状が出るということは、すでに周りに影響が及んでいるということになり、かなり進行しているものと考えます。手術して取り除くことが確実で安全な治療法だと思います。
「手術」と聞くとどうしても、体の負担などを考えて「怖い」と感じることもあるでしょう。しかし、最近は胸腔(きょうくう)鏡手術など侵襲(体へのダメージ)の少ない手術ができるため、年齢を考えてもそれほど心配されることはないと思います。主治医とよく話されて、手術についてしっかりと聞いてみてはいかがでしょうか。
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回答は、がん研有明病院呼吸器センター長の西尾誠人医師が担当しました。
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