本書は『Why the Allies Won』第2版(2006年刊)の邦訳である。第1版刊行(1995年)から四半期以上がたつ。すでに第二次世界大戦を分析した古典的名著となっている。著者は第二次大戦史を専門とする歴史学者。英学士院特別会員であり、世界で唯一「戦争学部」を設ける名門「キングス・カレッジ」(ロンドン大学)でも教鞭(きょうべん)を執った。『ヒトラーと第三帝国』(河出書房新社)他多数の著書を上梓(じょうし)、数々の受賞歴に輝く。
およそ戦争における勝因と敗因は表裏一体であろう。『なぜ連合国が勝ったのか?』(本書邦題)という問いは、「なぜ枢軸国(日独伊)は負けたのか?」という問いとも重なる、はずだ。ところが、日本では「なぜ負けたのか」を問わず、そもそも「なぜ圧倒的な物量を誇るアメリカと戦ったのか」と問う。案の定この夏も、そうした歴史認識が日本列島を覆った。
他方、本書はこう指摘する。「なぜ連合国が勝利したかを理解するためには、資源、技術、兵員といった物質的説明だけでは不十分だ」「戦争には倫理的側面があり、それはいかなる結果の理解からも切り離すことはできない」「戦争の歴史には、物質的に不利な小国が、より大きく、より豊かな敵を打ち負かした例がいくつもある」
日本人こそこう主張すべきではないのか。それなのに、この夏も「なぜ無謀な戦争を始めたのか」「なぜ負ける戦争をしたのか」等々の問いに終始した。
再び本書に学ぼう。序文でこう訴える。「連合国は皿に載せられた勝利を受け取ったのではない。戦って勝ち取らなければならなかったのだ」。本文もこう説く。「予測不能の熾烈(しれつ)な戦いだった」「一九四二年初頭当時、道理をわきまえた人間で、一見してこの戦争の最終結果を予想できた者は一人もいなかっただろう」。そして最終章をこう結ぶ。「今日の視点から見ると、連合国の勝利はなんとなく必然のように思えるかもしれないが、戦争中期の戦況はきわどい状況にあった」。今日の視点から見ると、日本の敗北は必然のように思えるかもしれない。だが、戦史の真実は違う。われわれ日本人こそ、そう認識すべきではないだろうか。(楽工社・4345円)
評・潮匡人(評論家)































