Q 53歳、女性です。10年前、高度異形成で子宮頸部(けいぶ)の円錐(えんすい)切除術を受けましたが、最近の検査でハイリスクHPV(ヒトパピローマウイルス)が陽性となり、子宮頸部に中等度異形成が見つかりました。どうすればよいでしょう。
A 今回の中等度異形成は10年前の病気が再発したのか、新たに頸部の粘膜上皮に発生したものなのかが気になりますね。子宮頸がんの原因になりうるハイリスクHPVが陽性とのことですので、10年前の病気の遺残(取り残し)というより、正常な粘膜上皮に持続感染していたHPVが新たに異形成を発生させた可能性が高いでしょう。
Q 早急に治療した方がよいでしょうか。
A 中等度異形成は検査を繰り返して経過観察するうちに50%くらいは消失(自然治癒)します。そのため本来は急いで治療を要する病気ではありません。しかし今回は、①10年前に高度異形成を切除した既往歴があり②53歳でハイリスクHPVが陽性であることから、病巣が消失する可能性は低いと思います。
Q ハイリスクHPVの陽性。この検査結果をどう解釈すればいいでしょうか。
A 子宮頸がん検診受診者の年代別のハイリスクHPV検出頻度は、およそ20歳代で40%、30歳代で20%、40歳代で10%、50歳代で5%で、加齢とともに減少します。これはヒトの免疫システムがHPVを排除するためです。しかしそうした免疫システムをくぐりぬけ、HPVが頸部の粘膜に持続感染してしまうと、上皮細胞を腫瘍化させる可能性もあります。今回は53歳でハイリスクHPV陽性なので、患者さんの免疫システムでHPVを排除できないと思われます。そこで、いずれ現状より病巣は進展(悪化)する可能性が高いと考えます。
Q では、近いうちに何らかの治療が必要でしょうか。
A 中等度異形成を進展させないようにする免疫学的治療の開発は進んでいますが、現時点では臨床使用には至っていません。今回の場合、①2回目の異形成で②53歳で閉経後であることから、治療の第1選択は子宮全摘出になるでしょう。10年前の高度異形成の治療以降、定期的に診察を受けていますから、進行期の子宮頸がんにまでなっている可能性は極めて低いです。病巣の進展の程度を診断する目的で、子宮頸部円錐切除術を行うこともありますが、今回は不要と考えます。
Q 閉経後の子宮頸部円錐切除術には不利益がありますか。
A 妊娠可能年齢である患者さんでは、病巣は子宮頸部の膣側に発育しますから子宮頸部円錐切除術による治癒率は96%以上ですが、50歳以降では、病巣が子宮体部側に発育しますので治癒率は80%くらいに低下します。さらにこれらの年齢の患者さんでは、定期的な月経によって子宮頸部の疎通性(詰まらず通りのよい状態)が保持されますが、閉経後では子宮頸管が狭窄(きょうさく)・閉鎖するリスクが40%以上あって、以後の適正な検診ができなくなります。こうなってしまうと早期診断ができませんので、この点は大きな不利益と考えます。
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回答は、がん研有明病院の瀧澤憲医師(婦人科前部長)が担当しました。
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