一方、提言では格差是正を重視する首相の姿勢を反映し、分配戦略も詳述されたのが特徴だ。賃上げ企業に対する法人税の優遇措置を「本年末の来年度税制改正において結論を得る」と明記。介護士や保育士などの賃上げにつながる公的価格の見直しも追加経済対策で前倒しし、令和4年度から恒久措置にする方針を書き込むなど成長戦略よりも具体的な記述が目立った。
少子高齢化やデジタル化の遅れなどによる生産性の低迷で、日本経済の実力を示す「潜在成長率」は長年0%台にとどまる。提言でも地方にデジタル化を拡大する「デジタル田園都市国家構想」など、成功すれば生産性の底上げにつながる政策もあるが、地方自治体向けの「大規模な交付金」を除けば具体性に乏しい。
いまだに漠然とした「新しい資本主義」が日本経済に好循環を作り出すには、4年度の成長戦略をまとめる来春までに、さらなる肉付けが求められそうだ。