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3回目の接種間隔、二転三転 自治体に困惑広がる

新型コロナウイルスワクチンの3回目接種をめぐり、接種間隔に関する政府方針が二転三転したことで接種業務を担う自治体に困惑が広がっている。当初2回目接種から「8カ月以上」が原則だったが、新たな変異株「オミクロン株」の世界的な感染拡大を受け、政府が前倒しの意向を表明。ただ、自治体ごとに準備状況が異なる上、ワクチンの供給量などにも課題があり、不安の種は尽きない。

「やむなく(前倒しの)接種を控えている状況だ。早く打たせてほしい」。福島県相馬市の立谷秀清市長は憤然とした口調で語る。

同市は供給済みの約6千回分の米ファイザー製ワクチンを使い、医療従事者約1千人に加え、今月中に75歳以上の高齢者約5千人への3回目接種を行う計画を立てていたが、「8カ月以上」の政府方針によって足止めを食らっている。

政府が現状で8カ月から6カ月への前倒しを認めているのは、医療機関や高齢者施設内でクラスター(感染者集団)が起きたか、同じ保健所管内の複数施設がクラスター化した場合のみ。適用は横浜市の高齢者施設1カ所に限られる。

立谷市長は「クラスターで死者が出てから接種したのでは遅い」と疑問を呈し、相馬市の担当者も「厚労省の通知が正式に出るのを待っている」と期待する。

愛知県も前倒し決定を待ち、1、2回目接種の余剰ワクチン約58万回分を使い、高齢者施設や障害者施設の利用者らへの優先接種を目指す。京都市も医療従事者や施設入所者、職員計約9万人の接種間隔を6カ月に短縮する方針を示している。

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一方で、前倒しへの不安を漏らす自治体もある。東京都台東区の担当者は「『8カ月』のスケジュールで、すでに各病院に個別接種を頼んでいる。前倒しによって3回目接種のピークが変わってくるので、人員確保が難しい」と話す。

混乱の背景には、オミクロン株の出現がある。政府は原則8カ月とした上で、6カ月への前倒しは例外であることを強調。だが、オミクロン株の世界的な感染拡大により、前倒しに一気に傾いた。ある自治体関係者は「1カ月の間に方針が二転三転し、対応しきれない」と打ち明ける。

高齢者への接種時期が迫り、多くの自治体はワクチンの調達にも気をもんでいる。かかりつけ医を中心に個別接種を進める「練馬区モデル」で知られる東京都練馬区の担当者は「接種体制は整えたが、肝心のワクチンが来なければ何もできない」と話す。

同区に供給予定のワクチンは今月中に約6万9千回分、来年1月下旬~2月に約4万3千回分の計約11万2千回分。6カ月に前倒しになれば、来年1月には約12万人分の接種が必要になる見込みのため、現状の供給量では到底足りない計算だ。

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ワクチンの種類が接種計画に影響する可能性もある。ファイザー製に加え、米モデルナ製も3回目接種の使用が近く承認される見込みで、政府は1、2回目と3回目に異なるワクチンを打つ「交差接種」を認め、ファイザー製とモデルナ製で希望する方を接種できる方針を示している。ただ、副反応への懸念からモデルナ製を敬遠する人が一定数見込まれるという。

立谷氏は「若い人が接種する時期にモデルナ製の供給が多くなり、ファイザー製が足らず、混乱が生じるのではないか」と推測。「ファイザー製を待っていて接種が遅くなるより、モデルナ製を打った方がいいときちんと説明しなければならない」と話した。


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