風が吹かず電力価格が4倍に…「脱炭素の優等生」スペインが陥った再エネ依存の悲劇

    ■選挙次第でスペインも脱・脱原発に転換か

    それでもスペインは脱原発にこだわり続けるのだろうか。それは真に、次期の総選挙の結果にかかっている。

    任期満了に伴う総選挙は2023年12月とまだ間があるとはいえ、それ以前に解散総選挙が行われる可能性は十分にある。足元、サンチェス首相率いる与党社会労働党(PSOE)の支持率はライバルの国民党(PP)と拮抗(きっこう)している。

    サンチェス政権は、中道左派のPSOEと極左政党であるウニダス・ポデモス(UP)との左派連立政権だ。中道右派であるPPが次期総選挙で勝利した場合、極右政党のVOXと右派連立を組む公算が大きい。

    PPとVOXの右派連立政権が成立した場合、産業界寄りの立場を取るため、スペインが脱・脱原発に舵(かじ)を切ることになるだろう。

    出所=ElectoPanel/Electomanía
    出所=ElectoPanel/Electomanía

    スペインの経験は日本にとっても参考になる話だ。

    COP26に合わせて経産省が発表した「第6次エネルギー計画」で、日本は2030年度の電源構成に占める再エネの割合を36~38%と従来の目標(22~24%)から大幅に引き上げた。19年度時点で再エネの割合は18%であったから、この10年でその倍を目指すという目標である。

    とはいえ日本では、2022年4月に従来の固定価格買取制度(FIT)に代わってフィードインプレミアム制度(FIP)が導入される。

    事業者のコスト意識を高めることが目的だが、この制度の下で事業者の再エネ拡充インセンティブがどれだけ刺激されるかは未知数。蓄電装置の開発など出力の不安定さをカバーする取り組みも不可欠だろう。

    ■再エネ普及のスピードより重要なものがある

    またスペインの場合、ピレネー山脈を隔てた原発大国フランスから電力を輸入することができる。もちろん、これはフランスと国境を接した地域に限定される話だが、それでも国内で不足する電力を輸入という形ある程度はカバーできる仕組みが備わっているわけだ。

    残念ながら、島国である日本にはそうしたセーフティーネットは存在しない。

    再エネの拡充を目指すことは確かに脱炭素化にかなうことだろう。とはいえ、その不安定性に鑑みれば、再エネの拡充は天然ガスや原子力など他の電源との兼ね合いの上で戦略的に進める必要があることは明白である。

    ドイツやスペインなどの大陸ヨーロッパの国と異なり、日本は電力を輸入することが不可能だということを忘れてはならない。

    一部には日本のエネルギー計画を手緩(てぬる)いと批判する声もあるだろうが、日本は日本として、他国にはない特有の課題を持っている。

    エネルギー政策の在り方は、経済の根幹に関わる問題だ。他国の動向に比べて再エネの普及のスピードが遅いからといって、一概に批判されるべきものではない。急がば回れ、という格言を噛(か)み締めたいところである。


    土田 陽介(つちだ・ようすけ)三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員

    1981年生まれ。2005年一橋大学経済学部、06年同大学院経済学研究科修了。浜銀総合研究所を経て、12年三菱UFJリサーチ&コンサルティング入社。現在、調査部にて欧州経済の分析を担当。

    (三菱UFJリサーチ&コンサルティング 調査部 副主任研究員 土田 陽介)


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