楽天モバイルのiPhoneユーザーの一部で「着信ができない」という声があがっている。経済評論家の鈴木貴博さんも経験者の一人だ。楽天モバイルはこの不具合をどのように捉えているのか。同社に取材をした--。
■応答は「電話に出られません」なのに、着信履歴はナシ
毎朝、自宅の固定電話から自分の携帯に電話をかけるのが私のルーティンになっています。今朝は幸いにして着信しました。
11月23日にスマホをMNPで楽天モバイルに乗り換えてからこの作業が続いています。きっかけは楽天のiPhone12proに乗り換えた日の夜、家に帰ると家内がやや不機嫌だったことです。
「なんどもあなたに電話をしたのに“電話に出られません”ばかりだった」
と言います。
仕事柄、私はクライアントとの打ち合わせや会議中は携帯に出ることはしません。でも「いつもは着信を見て必ず折り返してくれるのに、今日はずーっと待っていても返信が来なかった」と不満なのです。
それでスマホを確認したのですが、着信の痕跡がない。そこで家内のスマホから私に電話をかけてもらったところ、家内の電話からは「電話に出られません」の応答が流れ、私のiPhoneには何の着信履歴も表示されません。
「ごめん。楽天で買ったiPhoneの初期不良みたいだ」
と謝ってネットを調べました。ここで初めて、それが初期不良ではなく楽天モバイルユーザーで同様の障害がおきていることを知りました。
■楽天モバイルのiPhoneユーザーで起きている障害
楽天モバイルのiPhoneユーザーの一部に共通して、
(1)固定電話や他社の携帯から着信ができない
(2)手元のスマホには着信履歴が表示されない
という障害が起きているということです。
その夜、楽天モバイルの問い合わせ窓口から障害報告のメールを送ったところ、翌日正午過ぎに返信がありました。「以下の項目をお試しいただくことで解決のご報告をいただいております」として対処法が書いてあります。
具体的にはOSバージョンの更新、製品の再起動、Wi-FiのON/OFF、機内モードのON/OFF、SIMカードの抜き差しなどの作業です。これを全部やってみました。
それで自宅の家内に電話をして折り返してもらったところ無事着信したので安心していたのですが、夕方になって、
「鈴木さんの携帯に連絡したけど出られないみたいで」
と、ある取引先から報告が。一度リセットしてもまた着信できない状態に戻ることがあるのがこの障害の特徴のようです。
■「非常に多くの方から同じ報告を受けている」と回答
私の場合、着信できない障害が発生したときには機内モードをONにして、一呼吸おいてOFFに戻すとまた着信ができるようになることがわかりました。それで冒頭のようなチェックの日々が始まったのです。
(1)朝、固定電話からスマホにかけてみる(3日目、4日目の朝は着信できなかったのでリセット)
(2)夜、帰宅後に固定電話からスマホにかけてみる(2日目、3日目の夜は着信できなかったのでやはりリセット)
(3)リモート取材や打ち合わせなどあらかじめ電話がかかってくるときは5分前に機内モードをON/OFFする(今日まで打ち合わせに関してはこの作業で障害発生はなし)
着信障害は一回の対処では治らない様子です。開通してから二週目に入って着信しない日の頻度は減りましたが、それでも固定電話から電話がかからない状況は断続的に発生します。
さて楽天モバイルからのメールには、問題が解決しない場合、電波関連お問い合わせ窓口に電話をしてほしいと書かれています。そこで電話をしてオペレーターの方に調査をお願いしたところ、以下のことがわかりました。
(1)非常に多くの方から同じ報告を受けている
(2)iPhoneの初期不良ではない
(3)すべてのiPhoneの機種で同様の障害が起きている
(4)対策を検討中だがいつまでかかるか回答できない
(5)問題が解決したかどうかは個別に連絡できないので当社HPを確認してほしい
つまりこれ、私個人に起きたことではなく、結構大きな通信障害が楽天モバイルに起きているということだったのです。
■通信障害が起きる直前にあった「ふたつの変更」
これは大きな問題ではないかと考え、私は記事を書くために楽天モバイルの広報部にメールで質問を送りました。その回答は後述するとして、通信障害が起きるようになった直前に、楽天モバイルでは以下のふたつの変更がおきています。
(1)2021年6月30日、楽天モバイルが「iOS14.4以降にアップデートしキャリア設定をアップデートすると楽天回線がすべてのiPhoneでご利用いただけます」と発表。手持ちのiPhoneでも楽天モバイル回線が使えるようになりました。
(2)同、7月6日、楽天モバイルの無料音声通話アプリRakuten Linkを仕様変更。このアプリは楽天モバイルで無料通話をする際に使う標準アプリで、楽天モバイルのキャンペーンでもボーナスポイントを獲得する際にはこのアプリを使うことが条件になっています。
そしてこのふたつの変更後、楽天モバイルのiPhoneユーザーの少なからずの人数で、携帯電話に着信ができないという障害が報告されるようになったわけです。
■着信しなくても、それほど困らない
「電話会社の電話に着信できない」というのは重大障害に思えます。それにもかかわらず、この問題が公表も報道もされていない理由を先に考えてみたいと思います。
ひとつ気づいたことは、昔と違って携帯電話が着信しなくてもそれほど困らないのです。私の楽天モバイルのiPhoneは音声通話が着信しないことがあると周知されていれば、相手はSMSかメール、LINEなどでメッセージを送ってくれるわけで、こちらから折り返しの対応もできます。
その一方で、飛び込みの電話がかかってこないのは意外と居心地がいいものです。仕事中に突然電話がかかってくると、そこで仕事が止まります。確かに楽天モバイルに切り替えてからそのストレスが減りました。
私の仕事の場合、飛び込みで電話がかかってくるのは主にマスメディアからです。何か経済事件が起きたときに「コメントをいただけませんか?」と電話がかかってきて、そこで仕事が止まります。もちろん取材謝礼はいただけるので合計すれば毎月一回、高級フレンチに出掛けるぐらいの臨時収入にはなりますが、電話がかかってこないことで困るのはそれがなくなるくらいです。
■「気づいていないユーザー」が多いのではないか
もうひとつ気づいたことは、かなりの数のiPhoneユーザーがこのことを把握していない可能性です。着信履歴が残らないので電話がかかってきたことに気づかない。でもLINEで用件は済んでいるので困らない。そもそも障害がおきていることに気づかないわけです。
11月25日、前述のように私は楽天モバイルの報道関係者向けの問い合わせ窓口のメールアドレスから、広報部に以下の質問を送りました。
(1)着信ができないという障害はどれくらいの規模で発生しているのか?
(2)着信ができない障害がおきていることを、なぜ販売ページでは告知せずにiPhoneの販売を続けているのか?
2週間ほどたった12月10日、広報部から以下の回答をいただきました。
(1)お客様からのお問い合わせ件数等については、回答を控えさせていただきます。
(2)お問い合わせいただいている事象については、お客様のご利用状況やご利用されている環境をお伺いしながら、対処方法についてご案内しております。
■対処方法は案内しており、販売継続は問題ないという見解
ふたつの質問ともストレートにはご回答いただけなかったのですが、プレジデントオンラインの担当編集者が電話で問い合わせたところ、2番目の質問について以下の説明がありました。
「問い合わせが来ている件数はごく一部です。楽天モバイルとしては対処方法を案内しており、それでも利用できない利用者には個別対応をしています。販売と事象は関係性がないと考えており、販売は問題ないと考えています」
私は楽天モバイルから案内された対処方法では解決できていない利用者のひとりです。そして「個別対応をしている」という公式回答は、私の実体験とは異なります。この記事の中で報告したように、コンタクトセンターからは「障害が直るまでどれだけ時間がかかるかわからない」「問題が解決したかどうかは個別に連絡できない」として、謝罪はあれど放置されている状況です。
楽天との公式なやりとりとしては手掛かりがない状況ではありますが、私の記事は企業経営の専門家が経済事象について分析をする記事なので、ここから独自の分析による解説を展開してみたいと思います。































