「楽天モバイルのiPhoneで着信ができない」なぜ楽天モバイルはそれでも販売を続けるのか

    ■販売サイトでの「売り方」が変更されている

    この問題、想像するにおそらく楽天グループのトップまで話は行っていると思います。そしてこの問題はことが大きくなれば携帯事業に致命的な打撃が起きる一方で、問題を再定義すればことが大きくならない可能性もありそうです。ここ数カ月間の楽天モバイルの対応をみると問題の存在を積極的に公表していないことは事実です。一方で楽天モバイルのサイト上の説明は少しずつ変わっています。

    現在、iPhone13をメインビジュアルに展開されている楽天モバイルのトップページでのRakuten UN-LIMIT VIの特徴は、

    ・楽天回線エリアは1GBまで0円~どれだけ使っても最大税込3278円

    ・楽天回線エリアはデータ無制限

    ・パートナー回線エリアは国内5GBまで

    ・さらに最初の3カ月プラン料金無料

    という説明になっています。

    ところが、私が今年2月、プレジデントオンラインに<「格安スマホ業界はこれで終わり」大手3社を追いかける楽天プランの破壊力>という記事を書いた当時、楽天モバイルが強調していた「国内通話無料」はメインの特徴から外されています。上の画像が今年2月時点のトップページ、下が現在のトップページです。同じように見えて実は通話に関する表現が変更されているのです。

    2021年2月当時の楽天モバイルトップページ。「Rakuten Linkアプリ利用で国内通話かけ放題」と大きく書かれている(画像=楽天モバイル公式サイトより)
    2021年2月当時の楽天モバイルトップページ。「Rakuten Linkアプリ利用で国内通話かけ放題」と大きく書かれている(画像=楽天モバイル公式サイトより)
    2021年12月13日現在の楽天モバイルトップページ(画像=楽天モバイル公式サイトより)
    2021年12月13日現在の楽天モバイルトップページ(画像=楽天モバイル公式サイトより)

    ■Rakuten Linkアプリを終了させれば終止符は打てる

    「あれ」と思ってページを下に繰ると「国内通話はかけ放題」という表示があって、

    ・10分(標準)通話かけ放題

    ・月額1100円で何度でもご利用いただけます

    に説明が変更されています。以前メインビジュアルにあった「Rakuten Linkアプリ利用で国内通話かけ放題」という大きな文字が削除されているのです。

    現在の楽天モバイルトップページのページ下部。<「Rakuten Linkアプリ利用で国内通話かけ放題」の詳細を見る>の文字は小さい(画像=楽天モバイル公式サイトより)
    現在の楽天モバイルトップページのページ下部。<「Rakuten Linkアプリ利用で国内通話かけ放題」の詳細を見る>の文字は小さい(画像=楽天モバイル公式サイトより)

    よく見ると「Rakuten Linkアプリ利用で国内通話かけ放題」は現在では小さいリンクに変わっていて、それを押すと別ページに飛びそこでようやくRakuten Linkアプリを使うと国内通話が時間無制限・無料でかけ放題になるという情報が表示されるように広告表現全体が変更されています。

    これはユーザーから見れば怖い表現変更です。この問題が大きくなれば、楽天モバイルがRakuten Linkアプリを終了させることでこの問題に終止符を打つことができることを意味するからです。iPhoneに着信しない問題が起きているのがRakuten Linkアプリが入っているiPhoneユーザーだけだとすれば、Rakuten Linkアプリがなくなればこの問題は起きません。

    ■「事態が大きくなる前に解決すればいい」経営問題

    そもそも4カ月たってまだこの着信問題が解消できていないということは、問題はRakuten Linkアプリ側ではなく、iPhone側にある可能性も想像できます。その場合、修正は難しいでしょう。むしろ、インストールすることで電話機能に不具合の起きるアプリだとわかれば、iPhoneのApp StoreからRakuten Linkアプリが削除されるというケースも考えられます。

    もしそうなれば、「3278円でデータ無制限、国内通話無料」を信じて楽天のiPhoneを買ったユーザーは、一年もたたないうちに「4378円でデータ無制限、国内通話10分無料」に改悪されることになります。

    こうなってしまえば誰も得をしない。だから騒がないほうがいい。事態が大きくなるまえに、問題の解決方法が判明して、無事に使えるようになるのを待ったほうがいい。ちなみに、このような性質の経営問題は、大企業であればいくらでも発生します。

    この問題についてはこのまま様子見が続くのでしょうか。それとも楽天モバイルのトップページに小さな文字で何らかの「重要なお知らせ」が加わるのでしょうか。いずれにしても楽天モバイルは非常にやっかいな経営問題を抱えているのではないか、という話でした。


    鈴木 貴博(すずき・たかひろ)経営コンサルタント

    1962年生まれ、愛知県出身。東京大卒。ボストン コンサルティング グループなどを経て、2003年に百年コンサルティングを創業。著書に『日本経済 予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』など。

    (経営コンサルタント 鈴木 貴博)


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