オミクロン株、年越し警戒 令和3年のコロナ感染状況 

    新型コロナウイルス感染症対策に追われた令和3年が間もなく終わる。年明け早々に流行「第3波」のピークを迎え、2度目の緊急事態宣言が発令。デルタ株が猛威をふるった夏には各地で医療逼迫(ひっぱく)を招き、自宅療養中の死亡例も相次いだ。ワクチン接種率の向上に伴い、秋以降は感染状況も落ち着きを見せるが、オミクロン株の出現で予断を許さない年越しとなる。

    ワクチン接種進んだ1年

    今年は第3波から始まった。感染拡大の要因として、クリスマスや忘年会などの影響が指摘され、全国の新規感染者が8千人を超えた1月8日には、昨年4月以来2度目の緊急事態宣言が発令された。春の第4波は、英国由来のアルファ株の国内流入を機に蔓延(まんえん)。関西圏での流行が首都圏などにも広がり、ピーク時の全国の重症者は1400人を超え、死者が100人を超える日も続いた。

    夏には感染力が強いインド由来のデルタ株への置き換わりが急激に進み、第5波が到来した。全国の新規感染者は8月20日に過去最多の2万5975人を記録。病床が逼迫し、酸素投与が必要な中等症でも入院できず、自宅療養中に亡くなるケースが続出した。

    一方、2月から医療従事者へのワクチン接種を開始。政府の「1日100万回」の大号令のもと、高齢者や持病のある人への接種も急ピッチで進められた。9月下旬に高齢者の2回接種率が9割近くに達し、感染も抑制され、延長を繰り返していた緊急事態宣言も同月末で解除された。

    政府の集計では、2回接種を済ませた人は約1億人に上り、接種率も8割に迫っている。今月からは医療従事者への3回目接種もスタート。当初2回目接種からの間隔を8カ月以上としていたが、オミクロン株への警戒もあり、医療従事者は6カ月、高齢者は7カ月への前倒しが決まった。

    飲み薬承認、治療は転換点

    秋以降の感染抑制に大きな効果を発揮したワクチン。海外メーカーに後れを取ってきた国産メーカーも来年中の実用化に向けて治験などを進めている。もう一つの切り札である治療薬も、重症化を防ぐ抗体医薬品に加え、年末になって経口薬(飲み薬)が初めて承認されるなど、コロナ治療は転換点を迎えている。

    国産ワクチンでは、塩野義製薬が組み換えタンパクワクチンの最終段階の治験を実施、今年度中の供給開始を視野に入れる。第一三共はメッセンジャーRNAワクチン、KMバイオロジクスは不活化ワクチンの来年の実用化を目指す。DNAワクチンを開発中のアンジェスは、治験で有効性が確認できず、実用化の時期を令和5年に先送りした。

    治療薬では、抗ウイルス薬「レムデシビル」や抗炎症のステロイド薬「デキサメタゾン」など3製品に加え、7月に2種類の抗体医薬品を使う中外製薬の「抗体カクテル療法」を国内初の軽症・中等症向け治療薬として承認。ウイルスの働きを抑えて重症化を防ぐ点滴薬で、11月には注射器による皮下投与や予防薬での使用も可能になった。9月には英グラクソ・スミスクラインなどが開発した点滴投与の抗体医薬品「ソトロビマブ」も認められた。

    飲み薬の実用化で、医療現場のさらなる負担軽減も期待される。今月24日に承認された米メルク製の「モルヌピラビル」は、政府が160万人分を確保済み。他に米ファイザーや塩野義も飲み薬を開発している。

    東京都「病床稼働率85%」課題

    <第6波備え医療体制見直し>

    新型コロナウイルスの流行「第6波」に備え、東京都は医療体制の見直しに着手し、コロナ病床を最大6891床確保した。病床稼働率を85%に引き上げることで、今夏の「第5波」で最多の入院患者数だった9月4日の4351人を大きく上回る5857人を受け入れられる計算となる。

    第5波では、規模の大きな病院でも入院患者の受け入れを断らざるを得ない状況が生じ、病床稼働率は都内全体で最大7割程度にとどまった。課題となるのは、想定通りに85%の病床を稼働させられるかだ。

    都は対策として、医療人材を登録したデータベースを構築。宿泊療養施設や都が開設した臨時医療施設などに医師や看護師、保健師らを速やかに派遣できるようにする。

    症状が悪化した患者の入院や、回復した患者の転院などの調整を即時に行い、患者の受け入れや空床の確保を円滑に進める専任の支援班も都の入院調整本部内に立ち上げた。都医師会の猪口正孝副会長は病床稼働率の引き上げに向け、「全体の『調整力』を上げることが大事だ」と指摘する。

    一方、コロナ禍で傷んだ経済の回復も急ぐ。11月に運用を始めたワクチン接種記録を登録する「TOKYOワクションアプリ」は、ワクチン接種を促すと同時に、接種した人が安心して買い物や飲食を楽しめるようにするためのものだ。

    12月からは十分な感染防止対策を講じていると認証された飲食店では、接種証明を提示すれば1テーブル9人以上で利用することが可能となり、都は同アプリの活用を想定する。

    登録者は飲食店やホテルなどの協賛事業者が提供する特典も受けられる仕組みで、小池百合子知事は「(アプリの活用で)楽しみも、ワクチン接種という安全・安心も確保してほしい」と話す。

    年明け以降、政府の観光支援策「Go To トラベル」の再開に合わせ、都独自の補助事業も実施する方針だ。


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