NTTドコモは、電波を伝送するケーブルの近くに置くだけで周囲を通信エリア化できるアンテナを開発した。高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムや、その先の6Gなどで使われる高い周波数の電波を利用しやすくするなどの利点がある。次世代の高速通信の覇権をめぐり、各国の開発競争が激化しており、実用化を後押しする技術に注目が集まる。
ドコモが開発したアンテナは、高周波の電波を伝えるケーブルにプラスチックのかけらを接触させると、触れた部分から電波が漏れ出る現象を応用した。ケーブルを埋め込んだ床や壁の近くにプラスチック片を置くとその周りが通信エリアになる。
電波が漏洩(ろうえい)している場所は、電波を放つ基地局などのアンテナと同じ状態になっているため、通信が可能になる。従来は電波の伝送速度が遅くなるなどロスが発生しないよう、漏洩しにくいケーブルの開発に主眼が置かれてきたが、あえて電波を漏れ出させることに発想を転換。プラスチック片を底に取り付けるだけの低コストのアンテナが完成した。ドコモの実験では、アンテナとなるプラスチック片の大きさや形状を工夫することで通信エリアの範囲や電波の方向を制御できたという。
5Gや6Gで使われる高い周波数はまっすぐ進む力が強いものの、屋内や障害物に囲まれた場所には届きにくいという課題がある。隅々までエリア化するには、基地局の増設や中継機器の設置が必要だ。今回開発したアンテナであればケーブルのそばに置くだけで済むことから、遮蔽物が多い環境でもきめ細かなエリア構築が可能になる。基地局や中継機器の設置負担が減れば、省電力にもつながる。
次世代の高速通信をめぐっては、米中だけでなく、韓国なども開発意欲が旺盛で競争が激しさを増す。ドコモの中村武宏6G-IOWN推進部長は「2030(令和12)年ごろと予想される6Gの実用化も前倒しになる可能性がある」と話している。(高木克聡、写真も)































