軽井沢スキーバス転落事故の運転手は65歳だった
--昔は、60歳で定年して、孫の面倒を見つつ、年金でのんびり暮らすようなイメージでしたよね。
僕の祖父にしても60歳を前に事業を叔父に譲って、夕方は相撲を見ながら仕出しをつまみながらビールを飲んでいた。
でも、いまは働き続けなければ生きていけない。タクシーに乗っても高齢者が増えましたよね。80歳近いドライバーも珍しくない。
2016年1月に、軽井沢に向かうスキーバスが横転し、大学生13人が亡くなる、いたましい事故が起きました。65歳の運転手が夜通し運転し、深夜2時ごろに事故を起こしてしまった。高齢者が徹夜でバスを運転しなければならない社会ってどうなのか。いつからこんな国になってしまったんだと思いました。
20年ほど前から非正規労働者問題が顕在化し、生活に困窮する人が増えたにもかかわらず、国は有効な対策を打たなかった。非正規労働者の次は、老人を見殺しにするのか、と。
--登場人物のひとりが語った〈老人の数は飛躍的に増えているわ。でも、(注・介護)サービスを受けるには長蛇の列。このままじゃ日本は老人虐待国家になってしまう〉というセリフが印象的でした。介護問題に着目したのも、団地の風景がきっかけですか。
そうです。日常的に見る団地の風景に、違和感を抱いた瞬間があったんです。
2020年、介護事業社の倒産件数は過去最多に
団地内には、利用者を送迎する介護施設のミニバンが何台も行き来している。高齢者が増えているからそれは分かるんですが、おしなべて車体がベコベコにへこんで、傷ついているんですよ。飲食店に置き換えたら、施設名を書いているクルマは、暖簾や看板みたいなものでしょう。そんな施設に、自分の親を預けたらどうなるのか、と考えてゾッとしました。しかも、特定の介護施設のクルマではなく、見かけるクルマほとんどがそう。きっと業界全体に構造的な問題があるのではないか、と思ったんです。
実は……別のメディアでこの話をしたら、介護業界で働く人から苦言を呈されました。「クルマが傷つくのは利用者さんのことを考え、玄関のギリギリまで車を寄せるからだ」「人手が足りないので、専門の運転手ではなく、事務職の人が運転しているからだ」……。
もちろん善意で働く人がほとんどでしょう。しかしコロナ禍で介護業界が抱える問題が露わになった。
日本では2000年から介護保険制度がスタートしました。それまで公的な施設が担っていた介護を民間企業に丸投げした。そしてコロナ禍で、介護サービスの利用を控える人が増えた。僕の実感としても、コロナの影響で介護業界はさらに苦しい状態に陥っている。コロナ禍でも団地の近所にデイサービスの事業所が何軒かオープンしました。高齢化が進む地域だからニーズがあるんだと受け止めていました。でも、事業所は1年も経たずに看板を下ろしてしまう。実際に、2020年の介護事業社の倒産件数は、過去最多を記録しました。






























