一人だけオンライン会議で“のけ者”にされる…「職場のいじわるな上司」からわが身を守る方法

    過干渉上司のもとでメンタルを保つには

    こうした過干渉上司のもとでメンタルヘルスを保つためには、第一に「現在の状況は上司の特性によるものである」と客観的に捉えることが重要です。

    Cさんのように自律的に仕事を進め、成果を出せる中堅~ベテラン社員であれば、本来はこまかい報告は不要なはずです。どうしても報告させずにいられないのは、上司の気がすまないからであって、自分の仕事に問題があるわけではない。こう考えられれば、ある程度割り切って事務的に報告をこなすこともできるでしょう。

    また、「大きな問題が起きたときにはすぐに相談、報告をするので、日々の進捗については信頼していただきたいです」といったように、当の上司ともしっかりコミュニケーションをとることも大事です。同じように悩んでいる同僚がいれば、「仕事の進め方について上司と話し合おうと思っている。あなたも近いうちに話をしてみて」というふうに連携するのもいいでしょう。何人も集まって問い詰めるような形になると、かえって「徒党を組んで反抗してきた!」と悪印象をもたれかねないので、各人が1対1のコミュニケーションのなかで穏やかに伝えることがポイントです。同じようなことを部員がそれぞれに感じているとわかれば、上司も自分のマネジメントスタイルを振り返るきっかけになるかもしれません。

    考え方のクセを知って「うっかりパワハラ」を防止

    人には誰にでもその人なりの考え方のクセがあります。これを心理学の用語では「認知」と呼びます。楽観的な認知のクセがある人もいれば、どちらかといえば悲観的な認知の傾向がある人もいます。

    たとえばCさんが悩まされている過干渉上司のDさんは、「部下は放っておくとサボるかもしれないから、しっかり管理しないといけない」「報告をしない部下は、言えないようなことをしている可能性がある」と物事を悪いほうに考える傾向がありました。

    他人の考え方のクセを変えるのは容易ではありませんが、自分の考え方のクセは修正することが可能です。

    自分の認知の傾向を知り、極端になりすぎないように心がけることで、人間関係のトラブルやストレスは大きく軽減することができます。とくにマネジメント職にある人は、認知を振り返り、いきすぎた管理をしていないか、自分の考え方のクセを部下に押し付けていないか、振り返る習慣を持つことは有用でしょう。とくにリモート下で限られたコミュニケーションしかできない状況では、考え方のクセは強調され、強化されて伝わってしまう傾向があります。放任主義の人はより放任に、こまかく管理したがる人は過干渉になりやすいのです。いじめるつもりがなくても、意図せずして「いじめる側」とならないように意識していきたいものです。(日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事 見波 利幸 構成=浦上藍子)


    見波 利幸(みなみ・としゆき) 日本メンタルヘルス講師認定協会 代表理事。1961年生まれ。大学卒業後、外資系コンピューターメーカーなどを経て、98年に野村総合研究所に入社。主席研究員としてメンタルヘルスの研究調査、研修開発に携わり、日本のメンタルヘルス研修の草分けとして活躍。2015年より日本メンタルヘルス講師認定協会の代表理事に就任。20年かけて開発した2日間の「ヒューマンスキルを強化するマネジメント研修」は大企業を中心に絶大な支持を得ている。著書に『心が折れる職場』『上司が壊す職場』(以上、日経プレミアシリーズ)など多数。



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