製造業や建設業といった産業分野で、インターネット上の仮想空間を活用する取り組みが広がってきた。仮想現実(VR)対応のゴーグルを装着して遠隔地から工事現場を管理するなどして生産性向上に役立てる。少子高齢化で労働者不足が進み、新型コロナウイルス流行も続く中、デジタル化の流れを加速させる。
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鹿島とリコーは、新潟県長岡市の水路工事現場に周囲360度を撮影できるカメラを設置。遠隔地にいる複数の関係者がVRゴーグルを通じてリアルタイムで現場の状況を共有するシステムを導入した。映像内には参加者の頭部がアニメーションで出現。互いの視線を確かめながら「奥に見えるのが、くいを打つためのクレーンです」などと会話して施工状況を確認できる。現場に出向く移動時間や出張費を省け、効率向上につなげる。
現実世界の環境をネット空間に再現する「デジタルツイン」の活用も目立つ。建設機械のコマツは工事現場を複製する取り組みに注力。ドローンの空撮画像や人工知能(AI)などを用い、従来は現場監督の経験に頼っていた作業をシミュレーションで最適化。工事車両の数などの条件を変えた複数の計画案を事前に比較検討するなどして、効率的な工程管理を実現する。
昨年9月にはNTTドコモなどと共同で立ち上げた「EARTHBRAIN(アースブレーン)」(東京)が本格的に事業を開始。人手不足に悩む建設業界のデジタル化を支援していく考えだ。
オムロンは、産業用ロボットを生産ラインに導入する際のデジタルツインのソフトウエアを商品化。稼働時に機器同士が接触するかどうかなどを事前にチェックし、破損トラブルなどを未然に防ぐ。動作確認に要する時間や手間を大幅に減らせるという。辻永順太執行役員常務は「ものづくりのデジタルトランスフォーメーション(DX)を加速させ、生産現場に技術革新を起こす」と語った。