自宅に長女=当時(3)=を置き去りにして死亡させたなどとして保護責任者遺棄致死などの罪に問われた母親、梯(かけはし)沙希被告(26)に、東京地裁は9日、懲役8年の判決を言い渡した。過去に母親から壮絶な虐待を受けていた被告は、わが子に手をあげることはなかったものの、育児放棄(ネグレクト)という虐待により、死に追いやった。物理的な暴力を伴わないネグレクトは見抜くのが元々難しい。新型コロナウイルス禍で、実態把握がさらに困難になっているとみられ、専門家は警鐘を鳴らす。
当時、被告が住んでいた東京都大田区がまとめた事件の検証報告書によると、亡くなった長女が通っていた区内の認証保育所は、都の管轄のため、保育所から子供の状況を区に報告する仕組みがなかった。
区は、保育施設から虐待疑いなどの通告を受ける独自のマニュアルを作成していたが、機能していなかったといい、事件を受けて区は、保育所との連携強化を図る方針を改めて確認した。
厚生労働省によると、令和2年度に全国の児童相談所が対応したネグレクト事案は3万1430件で、高止まりが続く。NPO法人児童虐待防止協会の津崎哲郎理事長は「長引くコロナ禍で、ネグレクトの把握が難しくなっている可能性がある」と話す。
厚労省によると、新型コロナの影響で全面休園を余儀なくされている保育施設は今月3日時点で43都道府県777施設にのぼる。津崎氏は「コロナ禍で要支援家庭に民間の子供食堂やフードバンクが食べ物の配布を行うケースが増えた。虐待防止の観点からもこうした訪問型サービスを強化する必要がある」と訴える。































