なぜ東海大会準優勝の聖隷が選考から外れ、4強で決勝進出を逃した大垣日大が選ばれたのか。選考委はその理由について「個人の力量で勝る。投手力は大垣日大が上」などと説明した。
ところが、各方面から選考理由への疑問が噴出した。インターネット上では「理解できない」「聖隷の悲劇だ」などと波紋は一気に広がり、聖隷の地元、浜松市の鈴木康友市長は「恣意(しい)的な選定。大きな汚点となり、禍根を残す」と断じた。聖隷野球部OB会も、出場校を一つ増やして「33校目」として聖隷を選んでもらおうと、署名活動を開始する事態に発展していた。
国会でも話題になっている。末松信介文部科学相は日本高野連に対し、4日の閣議後の記者会見に続いて、17日の衆院予算委員会第4分科会で選考理由について「同じ説明であっても誠意を尽くして説明してほしい」と注文した。
過去には東海地区以外の地区大会決勝進出校が選ばれなかったケースもあるが、東海地区では長年、東海大会決勝に進出した2校が選抜大会に選ばれていた。甲子園という大舞台を目指して地区大会を勝ち上がってきた聖隷の選手たちにとって、落選の客観的な根拠も示されない事態は、日々の練習の意味さえも否定しかねない。「なぜ…というのは、いつまでも消えない」。上村監督は選手の心境を代弁する。
ミラクル聖隷
戦力で劣っていても機動力などを駆使して1点をもぎとり、強い相手を倒す。上村監督率いる聖隷野球の真骨頂だ。その〝上村イズム〟は選手に浸透し、東海大会で準々決勝、準決勝と2試合連続で逆転劇をみせて「ミラクル聖隷」と呼ばれた評価に象徴される。
実は、聖隷には甲子園のない夏も、ひたむきに手を抜かず、上村イズムで白球を追いかけた〝熱球譜〟が残る。
2年前の夏、静岡市の草薙(くさなぎ)球場。新型コロナウイルスの影響による県大会中止に伴う、県独自の代替大会(7イニング制)の決勝戦。エース右腕の城西裕太を擁する聖隷は浜松開誠館(浜松市)に逆転勝ちで優勝した。「甲子園のない夏」を制した上村監督は試合後、こう選手をたたえた。
「ここ一番の集中打。ほとんどの試合が、相手より安打が少ない形で勝っている。自分たちがやってきたことを証明するため、勝ち続けるのが目標だった。選手には(県制覇を)宝にしてほしい」































