消えない「なぜ」 禍根残る選抜落選の聖隷 「もう前を向こう」

    城西が試合後「自分たちを越える結果を出して甲子園に行ってほしい」と後輩に託していた言葉通り、夢の舞台の一歩手前まで来ていた。

    上村監督は今月10日、産経新聞の取材に、2年前の夏を振り返りながら「今回、もし甲子園に行けたなら、あれがあったから」と漏らし、唇をかんだ。「(城西たち先輩の思いが)つながっていたと思っていたが…」

    心理的ストレス

    覆らないと宣告された聖隷落選。聖隷野球部OB会の署名活動には「びっくりするほどの反響」(宮下良人会長)で多くの署名が集まったが、日本高野連の最終通告を受け、停止した。OB会の熱意を「ありがたい」という上村監督が懸念するのは、選手たちの今後だ。

    「ここから先が心配だ。(選考委に)『弱い』という烙印(らくいん)を押されたから」。待ち受ける春や夏の公式戦。敗退すれば「やっぱり弱い聖隷」を印象づけてしまい、選抜落選が蒸し返されかねない。選手には「負けるのが怖い」という心理的なストレスも芽生え始めている。

    裏を返せば、ハツラツとしたプレーが委縮(いしゅく)し、上村流野球が発揮できなくなる可能性があるということだ。

    「選手たちが大人の社会に振り回されるのは本当にかわいそうだ」と嘆く上村監督。とはいえ、いつまでも選考漏れを引きずっていても仕方ない。かといって納得できない-。相反する感情で揺れる中、最近は選手にこう伝えている。

    「もう前を向こう。前を向けなかったら、前を向くような準備や勉強をしろ。それしかない」。上村監督は何度も自分に言い聞かせるように語った。

    今回の騒動を踏まえ、日本高野連は10日発表の所見で「選考のあり方や選考経過の説明方法などについて今後検討していく」との見解も示したが、透明性の高い高校野球界に生まれ変わるきっかけにしてもらいたい。聖隷の悲劇を繰り返さないためにも。(岡田浩明)


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