はじめに
会社を退職する際、離職票と一緒に渡される書類に「雇用保険被保険者証」というものがあります。離職票が失業給付の受給に必要と広く知られている一方、被保険者証は何に使うのかよくわからない、という方も少なくありません。
そこで今回は、雇用保険被保険者証とは何か、離職票との違いや使用する場面について解説します。
雇用保険被保険者証とは?
企業などに入社すると、労働者は「雇用保険」に加入する必要があります。雇用保険被保険者証は、労働者が雇用保険にきちんと加入していることを示すためのものです。ここでは、記載されている内容や受け取るための条件、有効期限の有無や離職票との違いを解説します。
▼記載されている内容
雇用保険加入者の氏名や生年月日、資格取得日の他に「被保険者番号」が被保険者証には記載されています。記載されている情報の中で特に重要なのがこの被保険者番号であり、この番号は取得してから何度退職、再就職を経ても変更されません。そのため、転職や再就職などにより新しい職場で働く際には、手続きにおいてこの被保険者番号が欠かせないのです。
▼受け取るための条件
受け取るための条件は、「雇用保険の加入条件」を満たし、かつ加入手続きを済ませていることです。雇用保険の加入条件は、「所定労働時間が週に20時間以上であること」「雇用見込みが31日以上あること」です。これらの条件を満たしている場合、正社員に限らずパートタイム労働者やアルバイトなども加入の対象となります。
適切に加入手続きを行うことで交付されますが、多くの場合被保険者証そのものは会社に保管されており、退職などに応じて本人に手渡されるケースが一般的です。
▼有効期限について
記載されている被保険者番号は、どの会社の手続きにおいても同じ番号を引き継いで使用するため、有効期限が無いと思われがちです。しかし、退職から7年以上再取得しないまま経過すると、番号はハローワークの情報から消去されます。
たとえば、退職してから育児や介護などの事情により再就職しない場合であれば、7年以上が有効期限の目安と言えるでしょう。そのため、仮に7年が経過した後に再就職などで雇用保険に加入する場合は、元の番号とは異なる被保険者番号が新しく発行されるのです。
▼離職票との違い
被保険者証と同じく退職時に渡される書類に、「離職票」があります。雇用保険被保険者証と離職票は、書類の目的とその利用方法に違いがあります。
雇用保険被保険者証が、労働者が雇用保険の加入者であることを示しているのに対して、離職票は「労働者が該当する事業所を退職していること」を証明するものです。転職による再就職などの入社手続きにおいて、被保険者証の提出が必須とされる一方、離職票を提出する必要はほとんどありません。
離職票が必要となるのは、失業中に受け取れる「失業給付」の手続きのタイミングです。給付の受給条件のひとつである「失業の状態」にあるかどうかを確認するために使用されます。どちらも退職時に渡される場合が多いため、混同しないよう注意すべきです。
雇用保険被保険者証が必要になる場面
転職時の入社手続きや給付金の支給手続き、厚生年金の決定請求など、さまざまな場面で被保険者証が必要になります。ここからは、それぞれのケースを詳しく解説します。
▼転職時の入社手続きの際
被保険者証が必要になるのは、新しい職場で入社手続きを行う場面です。新しい事業所で働く場合、雇用保険上で再び労働者の被保険者番号を確認し、再取得手続きを行います。
正確には手続きに必要なのは被保険者証そのものではなく、記載されている「被保険者番号」なのですが、番号の記入ミスなどを避ける意味でも、被保険者証そのものが重視される場合がほとんどでしょう。
よって入社手続きにおいても、人事部や総務部など、担当部署から被保険者証の提出を求められるケースがあります。そのときにきちんと提出できるよう、個人で保管している場合は紛失しないようしっかりと管理しておくべきでしょう。
▼教育訓練給付金の支給手続きの際
労働者や離職し求職中の方が、厚生労働大臣の指定する教育訓練講座を受講、および修了した場合、雇用保険より「教育訓練給付金」の受給を申請できます。この申請において、被保険者証が必要になる場合があるのです。
教育訓練給付金の一種である「一般教育訓練給付金」の受給には、教育訓練講座の受講はもちろん、受講開始日からさかのぼって一定期間、雇用保険に加入していることが条件です。そのため、もし受給を考えている場合には保険者証が欠かせないと言えるでしょう。h3:厚生年金保険の決定請求の際
60歳以上、かつ65歳未満の労働者には、「特別支給の老齢厚生年金保険」の受給資格があり、この年金の決定請求の際に、雇用保険被保険者証の提出が必要です。
老齢基礎年金は原則として65歳から受給資格が発生しますが、雇用保険に加入している期間が1年以上ある場合は、65歳まで特別支給である老齢厚生年金が受給できます。この年金の受給には雇用保険の加入が条件のひとつであるため、手続きにおいて被保険者証を提示し、条件を満たしているか確認を受ける必要があるのです。
雇用保険被保険者証の再発行は可能?
誤って被保険者証を紛失してしまった場合も、定められた手続きを行えば再発行が可能です。再発行には働いている事業所、離職している場合は直近まで勤めていた事業所を管轄しているハローワークにて手続きを行います。その際に必要になる書類などは以下の通りです。
- 被保険者証再交付申請書(当日窓口で入手が可能です)
- 免許証者やマイナンバーカードなどの本人確認書類
- 印鑑
再交付申請書には、申請者本人の氏名や住所などの他、直前まで勤めていた会社の情報を記入する欄があるため、必要に応じて情報が把握できるものを用意しておくとよいでしょう。
また、申請書は窓口で直接受け取るだけでなく、ハローワークのホームページでダウンロードして事前に記入もできます。なお、再発行において手数料などはかかりません。
まとめ
雇用保険被保険者証は、労働者が雇用保険の被保険者であることを示す大切な書類です。失業してすぐ必要になる離職票と異なり、被保険者証は再就職や一部の手続きまでは使用しないため、つい紛失してしまう方も少なくありません。
しかし、雇用保険の被保険者番号は基本的に一人につきひとつのため、被保険者証は入社手続きの際に欠かせないものです。そのため、必要な手続きまできちんと保管しておくべきでしょう。
































