「友の安否が心配」 キエフに日本庭園手掛けた造園家

京都公園の工事現場で石橋を取り付ける作業をするウクライナの作業員たち。左から2人目がコーリャさん=2017年(中根庭園研究所提供)

ロシア軍によるウクライナ侵攻が続く中、首都キエフと姉妹都市の京都市でも、多くの関係者が情勢を注視する。約20年前に現地でウクライナ人と日本庭園を造って以来、同国との縁を結んできた中根行宏(ゆきひろ)さん(42)もその一人だ。「キエフは、造園家として世界で仕事をしたいとの夢を抱き、仕事仲間となる大切な友人を得た場所」。友の安否を気遣い、一刻も早い事態終息を願う。

「街のあちこちに公園があり、緑あふれたキエフの街に日本庭園は溶け込むようだった」。ウクライナでの庭園造りの様子が、今も色鮮やかによみがえる。

ウクライナの友人の安否を心配する中根行宏さん=京都市右京区

祖父は「昭和の小堀遠州」と称され、米国の日本庭園専門誌で2003年から18年連続で日本一となった足立美術館庭園(島根県安来市)を設計した中根金作(1917~95年)。祖父が設立した「中根庭園研究所」(京都市右京区)で、父と弟とともに、庭園の設計・施工監理を担う。

キエフとのかかわりは03年。「足立美術館に感動した」と、同国の実業家からの依頼を受け、私邸に6・5ヘクタールもの日本庭園を造ることになった。設計図を描くだけでなく、何万トンもの石を取り寄せ、現地で植栽を調達。ウクライナ人の施工業者に交じって、自身も土木作業に従事した。

「何を造っているのかわからず表情も乏しかった彼らも、形が見えてくると笑顔になり、意欲と誇りを持って取り組んでくれた」

自然の風景を取り込み、石組みで水の流れを表現したスケールの大きな庭園は完成に4年を要した。出来上がったときには、抱き合って喜んだという。

働き者で統率力のあるコーリャさんは庭造りに魅了され、本職の左官をやめてドイツで庭造りを学んだ後に庭園管理を任された。1歳下の通訳のボローディアさんとは食事をしたり、酒場でウオッカを酌み交わしたりと兄弟同然の付き合いに。「信頼できる仲間がいたからこそできた。私の初期作品で原点」と振り返る。

この庭園が評判となり、その後もウクライナで個人宅の庭園などを手がけたほか、ロシアからも声がかかり、仕事の幅が広がった。コーリャさんとボローディアさんは、そのたびに手伝いに駆け付けてくれ、17年、姉妹都市を記念して造られたキエフ郊外の「Kyoto Park(京都公園)」の改修整備の際も同じだった。

工事期間はわずか10日。2人が先遣隊となって打ち合わせを進めてくれ、なんとか期間内に完成にこぎつけた。庭のテーマは「友情」。庭園の中央には、京都とキエフの友情の懸け橋をイメージした石橋を配置した。橋には「コーリャら仲間との友情の証し」との願いも込めた。同国訪問は数十回を数え、脳裏に浮かぶのはともに汗を流した日々と、自然が美しく肥沃(ひよく)なウクライナの風景だ。

ボローディアさんはキエフを離れたが、コーリャさんの消息はわからない。「美しいキエフの街が破壊される映像を見るたびに胸が張り裂けそうだ。とにかく無事でいてほしい」。揺れる心とともに、はるか8千キロ離れた仲間への切実な思いをかみしめている。(田中幸美)


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