「人生を一緒に考えて」AYA世代のがん患者支援

高校時代に入院治療を経験した石橋勝志さん。友人から寄せられたメッセージや当時の日記を大切にしている

「AYA世代」と呼ばれる思春期や若年成人のがん患者への支援を広げようと、九州がんセンター(福岡市)が啓発活動を展開している。各地の医療機関や支援団体がイベントを繰り広げる「AYA week 2022」(5~13日)に合わせた取り組みで、闘病経験者もメディアやインターネットで思いを発信している。AYA世代については社会的な認知度がまだまだ低く、支援が不十分な現状が指摘されており、関係者は支援制度の充実を訴えている。

治る? 進級は?

福岡県内の県立高校に通っていた石橋勝志さん(20)は高校1年の夏、右ひざの骨肉腫と診断され、九州がんセンターに入院した。「高校生活が始まったばかりで、何も考えられなくなるほどショックだった。治るのか、退院できるのかという心配と進級への不安が大きかった」と振り返る。当時の日記には「学校に通いたい」と思いがつづられている。

「AYA week」に合わせてアビスパ福岡や福岡ソフトバンクホークスの選手から寄せられた応援メッセージ

義務教育である小中学校と異なり、高校には「院内学級」のような仕組みがなく、入院中に教育が受けられないケースが多い。石橋さんは、手術や抗がん剤治療と闘いながらも、学校側に学習意欲や進級希望があることを伝えた。

石橋さんの場合、高校が学習支援計画を作成して課題を出し、教員が訪問するなどしてサポートした。同センターも学習塾講師を招いて学びの時間を確保し、学校でテストを受けられるよう治療スケジュールを調整した。周囲の支えがあり、石橋さんは8カ月後に退院し、友達と一緒の進級がかなった。

友達の元に戻りたいという思いは、治療や勉強の原動力になった。石橋さんは進学も果たし現在は福岡県内の大学に通学、「退院直後は髪の毛がない状態で松葉づえもついていたので、留年で誰も知らないクラスにいくことになっていたらつらかったと思う。病気になっても頑張れば進級できるよう、各学校の支援態勢が整ってほしい」と語る。

主治医の野口磨依子氏(43)は「進級の判断や支援体制は高校によって差があり、単位認定をするための基準づくりが必要。進級進学が全てではないが、キャリア形成の道が閉ざされると、定職に付けないなどの問題も出てくる」と指摘した。

計画に明記も…

「AYA」は「Adolescent and Young Adult(思春期と若年成人)」の略で、15~39歳の世代を指す。啓発週間は昨年に引き続き支援団体でつくる実行委員会が設け、今年は70団体以上が参加。オンラインによる交流会や、AYA世代の課題を学ぶセミナーなどが開かれている。

九州がんセンターでは、生殖機能の温存に関するオンライン講演会(11日)のほか、応援メッセージの掲示を通じて支援の輪を広げる。同センターで長年にわたりAYA世代の支援にあたる臨床心理士の白石恵子氏(44)は「多くの人は治療に専念したらいいというが、治療と同時にその人の人生は進んでいる。若い人たちが大きな病気を抱え、どう生きたらいいか悩んでいる。病気による人生への影響を知り、今後の生きる道を一緒に考えてほしい」と呼び掛ける。

実行委によると、1年間で新たにがんの診断を受ける患者のうち、AYA世代は約2万人で、全体の2%程度にとどまる。患者が多くの病院や診療科に分散していることから、医療者も経験が積みにくいという。

この世代は進学や就職、結婚など私生活が変化する時期と闘病が重なり、患者は経済的問題や将来への不安など、他の世代とは異なる悩みを抱えている。さまざまなニーズがある現状を踏まえ、平成30年に閣議決定された「第3期がん対策推進基本計画」に、AYA世代の患者への支援体制の整備が初めて明記された。しかし、支援団体からは国や自治体からの支援態勢はまだ不十分という声が上がる。

実行委員長の大阪国際がんセンター(大阪市)の多田雄真医師は「この世代は国からの経済的支援が抜け落ちており、教育や就労支援も限られた自治体でしか実現していない。AYA世代は患者が少なく、まとまった声があげにくい。イベントを通じて一般の人や行政に広く啓発したい」と語った。(一居真由子)


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