食品や医薬品などのパッケージを製造・販売する丸東産業（福岡県小郡市）が、本社敷地内で第２工場の建設に着手した。コロナ禍で巣ごもり需要が拡大しているのに伴い食品用パッケージを中心に受注が増えており、生活様式の変化で需要が堅調に推移すると見込み生産力を強化する。同社は、開けやすかったり、吸湿性を持たせて乾燥剤の投入を不要にしたりと袋の使いやすさにこだわった「機能包材」の普及に力を入れている。新工場の建設を機に研究開発を加速し、国内外でシェア拡大を目指す。
第２工場は現在稼働している福岡工場の隣接地に建設中で、延べ床面積は約６千平方メートル。投資額は約２１億円で、２月１日に着工、来年３月の完成を予定している。
新工場には、パッケージ材料の「複合フィルム」を製造する最新鋭の設備を設け、生産の自動化や省力化を図る。植物由来の原料を使用するなど環境に配慮した製品の開発も促進する。
同社が手掛けるパッケージは、レトルト食品やふりかけ、デザートなど、商店に並ぶさまざまな商品に使われる。食品以外にも、医薬品や生活用品など幅広い業種で、多くの商品の包装に同社の技術が採用されている。
コロナ禍の影響で巣ごもり需要が拡大しており、主に食品用パッケージの受注が増加。少子化や高齢化を背景に単身者向け商品が増え、個包装化も広がっている。ライフスタイルの変化で求められるパッケージが変わっているという。
菅原正之社長は「家庭での食事の定着に加え、環境配慮の面から詰め替え用パッケージの需要も増えている。将来的な事業環境を見越して新工場の建設を決めた」と説明した。
袋に「役割」
デザインや印刷、複数の材料を貼り合わせるラミネート加工など、複数会社の分業となっているパッケージ業界で、丸東産業はデザインの提案から製品化まで一貫して手掛けることに強みを持つ。
しかし、関連業者は大小合わせて全国で数百社にもなり、価格競争は激しい。生き残りをかけ、同社が力を入れているのが「機能包材」だ。
パッケージのフィルムは１枚にみえるが、実はシートが何層にも重なってできている。シートはミクロン単位の薄さで、同社はこのシートに特殊加工を施す技術を持つ。
例えば、ミシン目の加工を加えてまっすぐに開くようにしたり、フィルム自体に吸湿性を持たせ、乾燥剤の投入を不要とするなどの包材で、ユニークな製品の開発で多くの特許や、優れたデザインの製品に贈られる「グッドデザイン賞」を受賞している。
機能性のあるパッケージは、商品を販売する側にとっては作業の効率化やコスト削減につながり、袋を使う側には、開ける際の負担やストレスが軽減する。手の力が弱い高齢者らにとって、開けやすさは「自分でできること」が増えることになり、生活の質が改善する。差別化できる機能性の開発は価格競争を脱し、製品の付加価値を高めるための取り組みといえる。
高宮剛志執行役員は「フィルムは通常、まっすぐ切れないが、はさみを使わず簡単に切れることを喜んでもらえたことが、機能性追求の一歩となった。受注生産でお客さまの要望や悩みに応える中で、新たな製品が生まれる」と話す。
不可欠な「裏方」
創業から８０年以上にわたり包装関連事業を手掛け、製造するパッケージは、九州を代表する数多くのメーカーが採用している。しかし、パッケージに「丸東産業」という社名が記載されることはほとんどなく、機能やデザインを追求しながらも「黒子」に徹する。
ただ、知名度の低さは社員の採用活動でマイナスとなる。同社は第２工場の建設を通じて中身を「守る」だけではない「オンリーワン」の製品開発や、脱炭素社会に寄与する技術の確立を進め、国内外で認知度向上を図る。海外では販売拠点を持つ香港やタイに加えて、豪州や北米などでの普及を見据えている。
菅原氏は「研究開発への投資を緩めず、おもしろいものを作り続けたい。世界で『機能包材の丸東』といわれることを目指したい」と意気込んでいる。（一居真由子）
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【丸東産業】 昭和１４年、丸東商会として福岡市内の住吉地区で創業。食品や医薬品などを包装する複合フィルムの製造販売のほか、パッケージ関連資材、充填(じゅうてん)機などの機械販売を手掛ける。従業員は約３８０人。全国１４カ所に営業所を持ち、香港、タイに販売拠点がある。筆頭株主は久光製薬。
