知財ビジネス

    子供たちの発明創造育成、実績者が事例集

    今月18日は日本の特許制度開始を記念する「発明の日」だ。日本のイノベーションを支える創造性ある人材を育てるため、国は知財創造教育に着手しているが、民間で面白い動きが出てきた。「中学生でも40人中2人は一線の研究者並みの能力がある。発明発表の場で意見されてすぐに新たな発明をして切り返すのには驚く」と話すのは京都府亀岡市で知財創造教育に取り組む久野敦司さんだ。大企業で数多くの発明に携わり、定年後は「発明創造」に焦点を当てた教育開発を行っている。

    久野さんは4年前から3年間、同府立園部高等学校付属中学2年生を対象に発明ゼミナールを開いた。周囲の課題に気づくこと、理想と現実を比較し原因や問題点を探る方法、日常の発明ノートの付け方とそこから知識を統合する論理的思考法などの座学の後、独力で生徒に発明する課題を与え、夏冬休み後に発表をさせた。座学で法律の話は一切しなかった。

    発明ゼミナールで日本の子供たちの創造力の高さとやる気を確認した久野さんは昨年末、SNS(交流サイト)上で仲間を募り、「発明実績者による発明創造教育」グループを立ち上げた。知財制度や特許出願などの法的手続きの前にある発明創造を教えられるのは発明実績者しかないと考えたからだ。

    「発明者が発明を生むとき、頭の中はどのような状態か、その感覚や暗黙知のようなものを文章で伝えたい」と言う久野さんは現在、「発明創造事例集」の作成を進めている。生徒・学生、指導者向けで、同グループに集まった21人の発明実績者のうち、7人が自らの発明を事例に経験をつづる。電子書籍として発明の日の発表を目指している。

    創造性の本質は想定外の事態への対応力にもある。前例踏襲や検討の先延ばしをせず課題解決に挑める人材は日本のさまざまな分野で必要とされている。米国はエジソンの誕生日である2月11日を「発明家の日」としている。人に着目して記念日を設けている点に、文化の違いが表れている。(中岡浩)


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