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特許技術で生まれたがん病理分析装置 医理工連携でさらに進化

がん組織の病理分析装置の脇で医理工連携について語る赤上陽一さん=秋田市の秋田県産業技術センター(八並朋昌撮影)
がん組織の病理分析装置の脇で医理工連携について語る赤上陽一さん=秋田市の秋田県産業技術センター(八並朋昌撮影)

秋田県産業技術センター技術フェロー 赤上陽一さん(62)

自ら確立した電界撹拌(かくはん)技術を応用して8年前、がん組織の分析時間を最短で10分の1に縮め、手術中の病理診断を可能にした世界初の装置を共同開発。そして今年4月、組織の前処理を自動化したうえ、6検体を同時に分析できる後継機の開発にこぎつけた。

「前処理自動化で病理分析の均一化と高精度化、省力化を同時に実現し、さらに病理医が常駐しない医療機関でも遠隔で病理診断できるようになりました」

分析装置の核である電界撹拌技術は、平成16年に特許取得した研磨用の電界流動制御技術を応用。1滴の液体を蒸発させず、何も触れることなく撹拌できる。

従来の産・学・官だけでなく医・理・工の連携も進めることで「多くの現場の声を聞き、各分野の技術を融合して新技術につなぐことができた」という。

父親は秋田大の電気工学の教授だった。「父の影響を受けたことはないが、エレクトロニクスに将来性を感じた」と東北学院大で電気工学を学び、仙台の電子部品メーカーに就職した。

だが入社10年後の平成6年、「自分の研究と会社の方針が折り合わず、ちょうど募集のあった秋田県の工業(現・産業)技術センターに転職したんです」。

学生時代には指導教授から「『工』とは天と地をむすぶ人の技だ」と教えられ、民間企業時代は「製品が販売担当者や消費者にいかに喜ばれるかを知ることで、製造現場の意欲が高まる」ことを実体験した。

この思いを堅持しながら、同センターでは「分野を超えて人と人が出会うことでイノベーション(技術革新)を生む」を実践、多くの研究成果を生んだ。同センター所長を3年間務めた令和2年に定年を迎えたが、再任用の技術フェローとして研究を続ける。

病理分析のさらなる作業自動化や口腔(こうくう)医療用装置開発など、新たな研究開発への意欲はますます盛んだ。

若者の流出が続く秋田でも「地方は人と人の距離が近いので、魅力あるモノを創るネットワークを作りやすい。この利点を最大限生かせば、若者があこがれる企業になれる」と指摘。一方、若者に対しては「オンラインでの業務が可能になっても最初は対面での関係づくりが不可欠。自分の考えをしっかり持ち、伝えるためにも本を読むことが大切ですよ」と助言する。

2人の息子はともに工学分野の仕事に携わる。父の影響は受けなかった自分とは対照的に、「楽しみながら研究に没頭する私の姿に2人とも感化されたのかもしれませんね」と頰を緩ませる。(八並朋昌)


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