米電気自動車(EV)大手テスラ最高経営責任者(CEO)のイーロン・マスク氏が、短文投稿サイト、ツイッターの買収を発表したことで、情報プラットフォームの公正性に注目が集まっている。議論は使われる検索エンジンのあり方に及び、そのエンジンのアルゴリズム(計算手法)公開にまで発展している。企業の営業秘密に当たる情報財で知財保護の対象であり簡単に公開できるものではないが、この検索エンジンについて考えてみたい。
特許情報解析ツールで知られるVALUENEX(バリューネックス)の中村達生社長は先頃、米国法律家との講演会で、パーソナライズ技術を用いた検索エンジンと、同技術を用いていない検索エンジンの検索結果(文章データ)を同社のマッピング技術で視覚化すると、情報の抜け落ちが誰にでも明確に分かることを紹介した。パーソナライズとは利用者の情報指向性を反映した情報提供技術で、広告収入型の検索エンジンでは一般的に使われている。
中村社長は「ある検索エンジンは新型コロナウイルス用ワクチンの副反応に関する情報エリアが空白になる。フィルタリング(特定の項目を除く技術)の可能性もある」と指摘する。利用者は情報の偏りや不在に気づかず、その検索結果が全てだと思い込む。同じことが知財の分野で行われていたら、自社技術の新規性や他社の特許を侵害していないかなどを正確に調査、判断できなくなり、特許出願ができなくなる。大企業では一般の検索エンジンは使わず、知財専用の検索エンジンを導入している。誰が使っても同じ結果が出るため安心はできるが、費用はそれなりにかかる。
以前、特許に関する無料検索エンジンがあったが、検索履歴を運営者側に追跡されているとの疑念が生じ、大企業では使用禁止になった。では予算のない中小企業はどうするか。特許庁は特許情報サイト「J-PlatPat」で無料の知財専門検索エンジンを提供している。まずはこの検索エンジンを使ってみるのはどうだろうか。(中岡浩)