半導体大手のルネサスエレクトロニクスが、平成26年に閉鎖した甲府工場(山梨県甲斐市)での生産を再開することが決まった。900億円を投じ、最新鋭工場として稼働させ、最大で300人を新規に雇用する計画だ。県内の半導体製造装置関連産業への波及効果も大きい。山梨県や地元経済界では、現在残っている工場建屋も近い将来には解体されるとみていただけに、今回の再稼働は「寝耳に水」(山梨県の担当者)。甲府商工会議所の進藤中会頭は「暗いニュースばかりの中、ルネサスサプライズだ」と歓迎した。
中核の最新鋭工場に
「正直言うと、再稼働があるとは想定していなかった。県が積極的に(再稼働に)働きかけたわけではないが、日ごろの行いがよかった結果ですかね」
ルネサスの甲府工場再稼働の報道を受け、長崎幸太郎知事はその驚きを冗談めかして語った。
今回の計画は、残っている建屋に製造設備を導入し、令和6年に生産を再開するというものだ。電気自動車(EV)などの大きな電力を使う機器の制御に不可欠なパワー半導体の生産拠点とする。
単に世界的な半導体不足に対応した動きではなく、脱炭素化の流れを受け、自動車の電動化が加速する中で、パワー半導体需要の大幅拡大が見込まれている。日本の半導体産業の中でも高い競争力を維持する得意分野でもある。
甲府工場では、半導体材料のウエハーが直径300ミリと、この分野では世界的にも最先端の技術を導入する。生産が本格化すれば、ルネサスのパワー半導体の生産は倍増するとしており、同社にとって甲府工場は、質でも量でも中核的な戦略生産拠点との位置づけだ。
200人から300人の新規雇用を創出するとしており、ルネサスの担当者は「地元山梨で、その半分程度を採用する方針」と説明している。
山梨県全体に波及効果
この甲府工場再稼働だけでも大きな効果があるが、県内には半導体製造装置大手の東京エレクトロンの製造拠点やグループ会社が多く、こちらにもプラスに働く。もともと、ルネサスとの取引が多く、甲府工場に導入される製造装置や設備でも同社グループへの発注は多いとみられる。
さらに、下請けとして製造装置の関連機器や資材を手掛ける電機・機械メーカーも多く、山梨県全体の産業への波及効果は大きい。































