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    『日本史を疑え』 最新学説 一から見直す

    『日本史を疑え』
    『日本史を疑え』

    『日本史を疑え』本郷和人著(文芸春秋・924円)

    天皇、宗教、土地、軍事、地域、女性、経済の7つのテーマ別に、日本史をわかりやすく解説したロングセラー『日本史のツボ』(文春新書)の著者、本郷和人さんが、あまたの定説、最新学説を一から見直すことに挑んだのが、本書です。

    たとえば私たちが習ってきた「歴史用語」。これらのなかには当時の人々が使っていた言葉ではなく、後世に作られたものが少なくありません。その一例が「幕府」です。これが武士による政権を表す言葉として使われるのは、江戸時代になってからのこと。源頼朝も、足利尊氏も、自分たちの作った政権を「幕府」とは呼んでいませんでした。歴史用語には「後世の解釈」が多分に込められており、当時の人々が見ていた世界像とはズレがある、と指摘します。本郷さんは東京大学史料編纂所教授。「古文書」「古記録」と「歴史書」との違い、それぞれの取り扱い方の基本も分かりやすく紹介されています。

    そうした歴史家の目で、歴史上の事件をみるとどうなるのか? 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で描かれる鎌倉幕府の創成期、なぜ東国の武士たちは流人の頼朝を担いだのか? 豊臣秀吉はなぜ最大のライバル家康を潰さなかったのか? といったさまざまな疑問に、明快で意外な結論を提示します。歴史を自分の頭で整理することは現代の社会を考える上でも非常に役に立つ知的レッスンです。本郷日本史の決定版といえる一冊です。

    (文春新書編集部 前島篤志)


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