被害総額100億円超えも 倉庫放火容疑の20歳男、巨額賠償の行方は

    大阪市此花区の人工島・舞洲(まいしま)にある物流会社「日立物流西日本」の倉庫で昨年11月に起きた放火事件で、日立物流側に少なくとも約80億円の損害が生じていたことが14日、判明した。商品の保管を委託していた他の企業の物流にも影響が及んでおり、全体の損害額は単純計算でも総額100億円を超える見込みだ。現住建造物等放火容疑などで逮捕・送検された元派遣社員の男(20)=事件当時(19)=に巨額賠償の資力はないとみられ、民事を含む責任追及には限界が見える。

    火災が発生し、煙が上がる日立物流西日本の倉庫=昨年11月29日、大阪市此花区
    火災が発生し、煙が上がる日立物流西日本の倉庫=昨年11月29日、大阪市此花区

    「代替の拠点から西日本各地へ配送されているが、中四国や九州では現在でも1日程度の遅れが生じている」。日立物流西日本に医療用医薬品の保管を委託していた日本ジェネリック(東京)の担当者は、長引く事件の影響にため息をついた。

    同社は西日本全域への配送拠点として倉庫を利用。当時、同社の全在庫の3割超にあたる医療用医薬品約280万点が保管されていたが放火でほぼ全焼し、被害総額は約39億円に及んだという。被害のほとんどは保険で手当てされたが、茨城県内にある別拠点からの商品輸送を余儀なくされ、そのためにかかったコストなどは含まれていない。担当者は「今後、日立物流側と補償交渉をしていく」と話した。

    日立物流側の被害額も少なくとも計約80億円に上り、倉庫の解体費用などが大半を占める。倉庫自体は賃借物件で、所有会社は火災保険に加入していた。

    日立物流の担当者は「被害額は今後上がる可能性もある」としつつ、男への賠償請求については「刑事事件が決着しておらず、請求するかどうかは言えない」とした。物品の保管を委託されていた他の企業側との補償交渉についても「今後対応する」と述べるにとどめた。

    企業法務に詳しい弁護士法人「ALG&Associates」の家永勲弁護士(東京弁護士会)は、一般的に従業員の行為で損害を受けた企業側は「責任を厳しく追及する態度を見せる必要がある」と話した。ただ今回の事件では、損害があまりに巨額のため、個人への賠償請求の実益が見いだしにくいことや、男が就業中の問題などに言及していることもあって「訴訟提起には慎重になるかも」との見方を示した。


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