22日公示-7月10日投開票に決まった第26回参院選は、125議席(改選124、非改選の欠員補充1)を与野党が奪い合う。自民、公明の与党は参院全体(248議席)の過半数(125議席)維持を勝敗ラインに掲げている。非改選議席が69あり、今回参院選で56議席を獲得すればクリアできる。ただ、岸田文雄首相が求心力を保ち、盤石な政権基盤を築くためには今回争う議席の過半数の63議席が必要だろう。
与党勝利なら政権運営安定
与党が衆院に続き、参院でも過半数を維持すれば、数の上ではすべての法案を可決・成立させることができ、安定した政権運営ができる。一方、参院で過半数割れする「衆参ねじれ」が生じれば、参院の法案審議は野党に主導権を握られ、政権運営は危機的状況に陥る。
平成19年の参院選では自民、公明が過半数割れ。すると政権運営は途端に行き詰まり、2年後の21年衆院選で敗北、野党に転落した。代わって政権与党となった旧民主党なども翌22年参院選で過半数割れ。24年衆院選に敗れ、与党の座を自民、公明に奪還された。
与党にとって参院全体の過半数維持が至上命令となるが、そのために獲得すべき議席は56。現有議席をある程度減らしても達成可能だ。与党は直近3回の参院選で71、70、76の議席をそれぞれ得ており、56という数字は低めのハードルといえる。
野党は20近い上積み必要
一方、野党にとっては、72議席を取らなければ過半数に達しない。改選53議席から20近い上積みという非常に高いハードルを越えなければならない。
岸田内閣は各種世論調査で高い支持率を記録している。一方、野党の支持率は低迷し、32ある1人区での一本化も進んでおらず、苦戦が予想されている。それでも自民の茂木敏充幹事長ら幹部らが56という低いハードルを設定するのは、もし目標をクリアできなければ、自民総裁である首相や幹事長ら党執行部の責任が問われ、進退問題に発展するからでもある。
参院全体の過半数という目標については、自民党内、特に非主流派と位置付けられる議員から「過半数だけではしようがない。もっと取らないといけない」(二階俊博元幹事長)といった指摘が出ている。
実際に「与党で56議席」となると、改選69議席から大幅減となり、党内での岸田首相の求心力低下は避けられない。首相が参院選後、思うように政策や人事を進められないかもしれない。
このため、今回争う125議席の過半数の63が事実上の目標といえそうだ。過去の獲得実績や現在の野党の低迷ぶりを鑑みれば、これも決して高い目標とはいえない。だが、政界は「一寸先は闇」。物価高などの経済状況や新型コロナウイルスの感染状況、あるいは閣僚らの不祥事といった不測の事態が起きれば参院選の風向きが大きく変わる可能性もある。(田中一世)