特許庁は、世界で急増している環境革新技術に関する特許文献を調査する際の基準となる「グリーン・トランスフォーメーション技術区分表(GXTI)」を作成した。環境問題に興味のある一般人から、新技術や新事業に挑む個人発明家、大学・研究機関、企業の技術・事業・知財・広報担当者、投資家・投融資機関のアナリストなどに加え、行政の政策担当者まで、幅広い層での活用を目指している。
特許文献調査は一般に、特許庁や民間情報会社が提供する特許情報データベースに技術名や解決課題などのキーワードを入力して人工知能(AI)などに検索させる方法と、国際機関や各国特許庁が用意する特許分類を組み合わせた検索式を作って検索する方法がある。課題は、前者がアルゴリズム(計算手法)や機械学習の仕組みについて公開されていない点で、後者は技術体系と特許分類に関する高度な知見が必要になる点にある。
GXTIは、特許庁が環境革新技術に詳しい有識者に相談して、大区分を「エネルギー供給」「エネルギー需要」「エネルギー貯蔵」「非エネルギー分野」「温室効果ガスの回収・貯留・利用・除去」の視点で構成し、その下に中・小区分を設けた。特許情報データベースで誰でも世界の特許文献の調査ができるようにするため、特許審査官が国際特許分類(IPC)を用いた検索式を小区分ごとに作成し、明示した。共通の区分表、検索式を使うことで、誰でも同じ検索結果が得られる。中立的で共通のエビデンス(根拠)を持つことで、立場や所属を超えた議論がしやすくなる。
特許庁幹部は「地球環境問題に対して各国知財庁はどんな貢献ができるのか。日本が提案したのがGXTIだ。海外特許庁から問い合わせも複数来ている」といい、海外での普及も視野に入れる。特許情報解析の第一人者として知られる野崎篤志氏はGXTIの注意点として「企業が戦略策定などで使う場合、(目的に合わせて)検索式を自社なりにアレンジする必要がある」と指摘する。(中岡浩)
◇
なかおか・ひろし 法大法卒。金融専門紙記者、金融技術の研究を行う財団法人などを経て、知的財産に関する国内最大の専門見本市「特許・情報フェア&コンファレンス」の企画や、知財に関する企業取材に従事。ジャーナリスト。高知県出身。