税とサステナブル、日系企業の課題は 脱炭素時代のビジネス戦略をEY Japanがサポート

    SDGs(持続可能な開発目標)やESG(環境・社会・ガバナンス)が社会に浸透するとともに、企業の温室効果ガス削減の取り組みが重要視されるようになった。二酸化炭素(CO2)の排出量に応じて課税する「炭素税」に日本の産業界が強く反発しているが、世界にネットワークを広げるEY Japanの専門家たちは、諸外国と協調して経済成長していくためにも炭素税導入は避けられないと見通す。さらに、脱炭素への貢献で政府が与える税控除などの“アメ“を受け取り、非協力的な場合にはインセンティブがないなどの“ムチ”をふるわれないようなビジネス戦略を描くことが日系企業には求められているという。EY税理士法人でタックス・ポリシー・アンド・コントラバーシーリーダーを務める関谷浩一氏と、インダイレクトタックス部パートナーの岡田力(ちから)氏に、フジテレビの清水俊宏氏が話を聞いた。

    国内では2012年施行の地球温暖化対策税(温対税)で、主に企業の化石燃料の利用で排出されるCO2に対して1トン当たり289円を課税している。これも炭素税の一種だが1トン当たり1万円を超える国もある欧州などと比べて負担が軽いと指摘されてきた。

    政府は2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」を目指しており、看板政策「新しい資本主義」では10年間で官民合わせて150兆円を脱炭素分野に投資する方針を示している。製造工程の変更などで脱炭素に協力した企業に対して税控除などのインセンティブを与えるとみられるが、日本企業は税制への感度が低いと関谷氏は話す。

    EY Japanの関谷浩一氏
    EY Japanの関谷浩一氏

    「一般論ですが、欧米と比べると日系企業はコスト削減が得意でも税金のコントロールができていません。例えば税引前利益が1000億円の日系グローバル企業が4割を納税しているときに、米国の企業では1割ということもあります。差額の300億円が次の事業投資や、社員の待遇充実に充てられると国際競争力にも影響します」(関谷氏)

    日系企業の税制への感度の低さは組織体制にも表れている。関税などの間接税を専門とする岡田氏は「税は片手間でできる仕事ではないのに、財務と経理を同じ部署で、しかも少ない人数で作業している会社もあります」と明かした。大企業ではそれぞれの部署が独立しているが、税の部署に付加価値税に特化したマネジャーを配置する欧米企業と比較すると大きな差があるという。また、日本の本社が知らないうちに海外子会社が現地で想定以上の税金を納めていたという、税への関心の薄さを象徴するような出来事もあったそうだ。

    岡田氏は、グローバル企業には子会社をおく国ごとに税制だけでなく、脱炭素の優遇措置が異なるという課題もあるとした。アジアには排出した炭素の量に応じて金銭的負担を求める「カーボンプライシング」を導入している国が少ないため、アジアで安く製造した製品を欧州に輸入すると、コストをかけて脱炭素に協力した企業がビジネス上の競争で不利になる恐れがある。脱炭素に関する規制を回避する「カーボンリーケージ」を問題視したEUは、炭素国境調整メカニズム(CBAM)を導入して、気候変動対策の規制が緩い国から輸入した製品の価格を調整することで公正な競争が行われるようにする方針だ。

    こうした各国の情報を収集して、脱税などのリスクを回避しつつ税金の払い過ぎを抑制するとなると、やはりグローバル企業には税の専門家の知見と手腕が必要になってくる。EY Japanの関谷氏、岡田氏たちはこうした分野でグローバル企業のサポートに尽力しているというわけだ。

    産業界の反発が根強い日本でも炭素税導入の議論は進められており、脱炭素をめぐって世界のビジネスは劇的に変わっていくと予想される。清水氏が日本の課題について尋ねると、関谷氏は「“アメとムチ“を拡大していく必要があると思います。できることはまだあるはずです。また、企業側が税をコントロールして、国が準備した制度を使うようにしていくべきです」と語った。岡田氏は「税金に関してパッチワークのように各国で局所的な対応をしていくのではなく、カーボンニュートラルでどう成長したいのかを意識して、ビジネス戦略の大きな“絵”を描くことが求められているのではないでしょうか」と企業には大局観が必要だと述べた。

    一方で、脱炭素のインセンティブとして優遇措置などを国に求める手続きが煩雑で企業側の負担になっているという問題もある。不正な申請を防ぐために仕方のない部分もあるが、手続きに時間をかけているうちにビジネスの局面が変わってしまう懸念もあり、関谷氏と岡田氏は「国が利用しやすい体制を整えることで企業も脱炭素と制度利用に前向きになるのでは」と提案。清水氏も「知らなかったから、使いにくいから利用しないということでは、株主だけでなく地球環境に対しても良くないですね」と賛同していた。

    ※本インタビューの関連記事はFNNプライムオンラインでもご覧いただけます。

    (提供:EY Japan株式会社)


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