【開発物語】富士通のスパコン「京」 逆転の発想、周波数下げ省電力 (2/7ページ)

2011.8.22 05:00

世界一の計算速度を達成したスーパーコンピューター「京」

世界一の計算速度を達成したスーパーコンピューター「京」【拡大】

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 06年になってようやく山中本部長から「検討しろ」と指示が出た。サーバーシステム事業本部のLSI(大規模集積回路)部隊と富士通研究所の技術者を主体に次世代テクニカルコンピューティング開発本部が発足したのは07年7月。理研のプロジェクト始動から1年以上たっていた。

 開発チームの陣容は150人に増強され、07年9月には、後に「京」に搭載することになる新型MPU「SPARC64VIII」の開発もスタートした。ただ、MPU開発を陣頭指揮する井上さんは「いまの作り方では電力がもたない」と頭を悩ませていた。最新のMPUを使って性能を大幅に上げたら消費電力も飛躍的に上がってしまう。例えば、プロセッサーの動作の同期を取るクロック周波数を2倍に早めれば消費電力は8倍に増える。その難題をクリアするため、井上さんは「奥の手を使った」

 それは「周波数を下げて電力も下げる」という逆転の発想だった。つまり、周波数を抑えて電力を下げる一方、周波数によらずに演算性能を上げる技術を徹底的に盛り込んだ。複数MPU間で同期を取りやすくするハードバリア機構に加え、演算状態を一時的に保持するレジスターを従来の5倍の256個に増やした。

 さらに、消費電力を、MPUの設計者が目で確認するためのツールを開発し、作り込みながら電力をいかに減らすかをチーム全体で「意地になって競った」(井上さん)。最終段階で30%以上の電力削減に成功したという。

(次ページ)工場の復旧状況が世界一を狙えるかに大きく影響

  • 「京」の主な開発メンバー。半導体、システム、ソフトウエア、性能評価など多様な部門の人材が「世界最速」を目指して集まった=川崎市中原区
  • 東日本大震災でSPARC64VIIIの製造ラインも被害を受けたが、24時間態勢で復旧作業を急ぎ、世界最速の性能テストに間に合わせた=富士通セミコンダクター子会社の宮城工場
  • 逆転の発想でこれまでにない低消費電力を実現した「SPARC64VIII」の拡大図
  • 計算速度で世界ランキング1位に選ばれた「京」について記者会見する理化学研究所の野依良治理事長(左から2人目)ら=6月20日
  • ラック1台には「SPARC64VIII」を8個搭載したCPU102個が収納されている