06年になってようやく山中本部長から「検討しろ」と指示が出た。サーバーシステム事業本部のLSI(大規模集積回路)部隊と富士通研究所の技術者を主体に次世代テクニカルコンピューティング開発本部が発足したのは07年7月。理研のプロジェクト始動から1年以上たっていた。
開発チームの陣容は150人に増強され、07年9月には、後に「京」に搭載することになる新型MPU「SPARC64VIII」の開発もスタートした。ただ、MPU開発を陣頭指揮する井上さんは「いまの作り方では電力がもたない」と頭を悩ませていた。最新のMPUを使って性能を大幅に上げたら消費電力も飛躍的に上がってしまう。例えば、プロセッサーの動作の同期を取るクロック周波数を2倍に早めれば消費電力は8倍に増える。その難題をクリアするため、井上さんは「奥の手を使った」
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それは「周波数を下げて電力も下げる」という逆転の発想だった。つまり、周波数を抑えて電力を下げる一方、周波数によらずに演算性能を上げる技術を徹底的に盛り込んだ。複数MPU間で同期を取りやすくするハードバリア機構に加え、演算状態を一時的に保持するレジスターを従来の5倍の256個に増やした。
さらに、消費電力を、MPUの設計者が目で確認するためのツールを開発し、作り込みながら電力をいかに減らすかをチーム全体で「意地になって競った」(井上さん)。最終段階で30%以上の電力削減に成功したという。