幾多の困難を乗り越えて達成した世界一だが、世界を見渡すと、すでに「京」をしのぐプロジェクトがめじろ押しの状態だ。米IBMは11年中に「京」と同等の性能を、12年中には2倍の性能を達成する計画。さらに欧米や中国で「エクサ(100京)」プロジェクトも動きだしている。文科省もエクサマシン開発に乗り出す方針で、富士通も「関与していく」(井上さん)考えだ。「京」で築いた日本のアドバンテージは次のプロジェクトにも引き継がれることになりそうだ。
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世界一目指し“ゲリラ勉強会”
≪TEAM≫
「京」の開発を担った次世代テクニカルコンピューティング開発本部には、LSI(大規模集積回路)、システム、ソフト、性能評価の技術者が集まった。現在は約300人の陣容だが、兼任や子会社を含めると総勢1000人が「京」の開発に関わっている。
システム開発統括部プロジェクト課長の草野義博さん(45)は「スパコンを作りたくて富士通に入社した」ほどのスパコン大好き人間で、ベクトル型のスパコン開発に携わったこともあるが、富士通が事業から撤退して以来、欲求不満が募っていた。「京」の話を聞いたときには一も二もなく「ぜひやりたい」と手を挙げた。
性能評価を担うPAプロジェクト課長の三吉郁夫さん(40)も「スパコンに関わりたくて」社内公募に飛びついた。インテル系スカラーマシンで担当した並列処理の経験を「京」プロジェクトで生かし「継続の重要性」を再認識した。本藤幹雄さん(40)は性能を引き出すためのハードウエア設計を担当。性能と消費電力の兼ね合いに頭を悩ませながら随所に独創的な工夫を凝らした。